議員はなぜ秘書に暴言を吐いたか:豊田真由子議員暴言報道から考える暴力の心理学

(写真はイメージ)(写真:アフロ)

■「豊田真由子議員、その女代議士、凶暴につき」(週刊新潮)

週刊新潮が豊田真由子議員の暴言暴行を報道(「豊田真由子議員、その女、凶暴につき」:週刊新潮6/29号)。大きな話題になっています。

豊田真由子氏「このハゲェ~」金切り絶叫!暴言暴行:日刊スポーツ6/23(金)Y!

豊田氏「暴行」報道 「本人が人間できていない」「(どこに?)生きてはいます」 事務所が大筋で報道認める:6/22産経新聞

【週刊新潮】凶暴代議士「豊田真由子」による秘書への“絶叫暴言&暴行傷害”音声:デイリー新潮

豊田真由子議員は、東大法学部→厚生労働省→国会議員というエリートです。同僚議員や先輩議員からは「まじめ」「仕事熱心」と言われていたようです。特に目上の人、先輩議員から可愛がられていたとも言われています。結婚し、子どももいます。

その一方で、暴言は日常的で、暴力をふるうこともあり、これまでに約100人の秘書が辞めているとも報道されています。

今回も、音声や報道を見る限り、ひどい暴言暴力に感じられます。こんなに優秀な人が、なぜこんなことをしてしまうのでしょうか。

■怒りと攻撃と暴力

怒りも攻撃も、それ自体は悪いわけではありません。正しく、適度な怒りや攻撃は必要です。でも、ここに悪の要素が入ると、暴力になります。暴力は、身体的暴力も言葉の暴力も許されません。

■道具としての暴力、感情的な暴力

相手を脅して金を得ようといった暴力は、道具的な暴力です。悪質ですが、自制心も働いていて自分の利益を考えます。一方、感情的に爆発して起こる暴力もあります。爆発することでストレス発散にはなりますが、大きなトラブルになることもあります。暴言暴力の結果まで考えられる心の余裕を失います。

■暴力の理由

人は、様々な理由で暴言(言葉の暴力)や、身体的な暴力をふるいます。理由の一つは、本人の心の問題であり、もう一つが環境です。暴力の背景となるパーソナリティーの問題などが絡んでいることもあります。

■権威主義的パーソナリティ

権威主義的パーソナリティとは、簡単に言えば、上にへつらい、下には厳しい性格です。彼らは、下からの評判は悪いですが、上からの評判は良い場合もあります。

彼らは、権威ある者には服従し、自分より弱い者には攻撃的です。思考の柔軟性に欠けており、自分の考えが社会の常識だと思い込みます。

権威主義的パーソナリティの人々は、相手によって態度を変えます。自分の立場、役割を強調し、「上司」「父」「議員」などとして当然あるべきと思い込んだ力の行使を行います。下のものに忠誠心と服従を強要することもあります。

見るからに乱暴そうに見える権威主義的パーソナリティの持ち主は分かりやすいのですが、頭が良いタイプの権威主義的パーソナリティの人は、一見するとその横暴さがわかりません。

■幼児性の高さ

頭が良くても、社会的地位が高くても、幼稚性の高い人はいます。彼らは、思い通りにならないと怒鳴ったり、乱暴な態度を見せます。

いじめに関する研究によれば、いじめっ子になりやすい人は、次のような人です。満たされない権力欲、傷つきやすい自己愛(いつも特別扱いされたい)、肥大した自我(実際以上に自分を偉大だと思う)・人間関係の不安、わがまま、正しい人間関係の未学習、ストレス発散、自己嫌悪感。

■クラッシャー上司

有能で出世していても、平気で部下を追い詰める人を、「クラッシャー上司」と呼びます。電通の女性新入社員過労自殺事件でも、話題になりました。

知的にも肉体的、精神的にも強くて有能な上司の中には、部下にも自分と同じものを求める人がいます。部下が同じようにできなければ、激しく罵ります。彼らの中には、部下を見下し、自分のやり方を押し付け、そして強く叱責する自分をかっこいいと感じている人もいます。

■被害者だと感じて暴言暴行を行う人

怒りっぽい人の中には、自分はとても我慢していると思っている人がたくさんいます。自分は被害者なのに理解してもらえず、いつも我慢させられていると思っているから、小さなことでもキレて暴言暴力をふるうことになります。

今回も、部下のミスにより、自分が被害を受け、自分の心が傷ついたと感じたようです。「叩かないでください」と頼む秘書に対して、「お前は、どれだけ私の心を叩いている!」「わかってないよ!」という言葉が録音されていますね。

たいていの場合、傷ついているのは事実です。ただもちろん、傷ついたからといって暴言暴力が許されるわけではありません。この人たちは、自分が傷ついたと強くアピールすることで、どれだけ周囲が傷ついているかに気がつきません。

■欲求不満と攻撃

欲求不満が高まると人は攻撃的になります。失業率が高まると暴動が起きやすくなるという研究もあります。家庭のストレスを職場で出す人もいますし、その逆の人もいるでしょう。

■間欠性爆発性障害(すぐキレる人)

日常的にキレる人の中には、診断名がついてしまう人もいます。「間欠性爆発性障害」とは、身近にいる動物や他者に対して理不尽な非難をしたり罵声を浴びせるなど、言葉での攻撃を行うことが週2回ほどのペースで起こる。また、自分の持ち物を衝動的に壊したり、動物や他者に怪我を負わせことが1年の間に3回起きているといった人々です。

彼らは、日常的なストレスが溜まっていなくても、ささいな理由で突然キレたりもします。

■暴言暴力が起こりやすい環境

たとえばいじめも、「いじめ衝動」を持った子が「いじめ許容環境」に置かれた時に発生します。乱暴な人がいつも乱暴なわけではありません。

外ではおとなしい子どもが母親に乱暴を振るい、会社ではペコペコしている男性が妻を殴ることは、珍しくありません。

今回の報道に関連して、「秘書に対するこの程度の暴言はある」と発言した男性議員がいました。発言はすぐに撤回されましたが、そのような認識は少なからずあるのでしょう。

もちろん現在ではダメなのですが、スポーツ選手とコーチ、芸能人と付き人など、多少の暴言暴力が許されるという意識が残っていることはあるでしょう。

また、車内のような密室だったり、事務所内の周囲の人々がイエスマンばかりだったりする環境でも、感情がストレートに出やすいでしょう。人に暴言暴行を働きたいと感じて人が、その行動が許される環境に置かれた時に、暴力が生まれやすくなるのでしょう。

■怒りと暴力

現代社会では、暴言暴行などの暴力の存在が明るみに出れば、社会的生命を失いかねません。今回も、もしも自分の特徴や周囲の環境の問題に気づき、この問題を解決しようと思っていれば、ここまで大ごとにならずに済んでいたかもしれません。

アサーション(自分と相手を大切にする表現技法)や、アンガーマネジメント(怒りのコントロール方法)を学ぶことは、ストレスの多い現代人の必須項目なのかもしれません。

東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。HP『こころの散歩道』。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』など。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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