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「ゴールデンウイークうつ」と5月病を防ぐための連休の過ごし方

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真はイメージ:ゴールデンウイークで混雑する東京駅)(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

楽しいはずのゴールデンウイークに、心が沈む人がいます。このままでは、連休明けには5月病状態。では、どうすれば良いでしょう。

■みんなが楽しいと憂うつになる

たとえば、「クリスマスは「身を切るような苦しみの時期」 英国人男性の半数が憂うつと訴える」という調査もあります(キャリコニュース)。

クリスマスうつ」という言葉もあります。

アジアからの日本に来ている留学生が、本来なら賑やかな旧正月を祝っているはずなのに、日本にいると何もないのが辛いと、正月うつのような状態になる人もいると言います。

欧米ならクリスマス、日本ならお正月が、一番家族がそろう楽しい時期でしょう。それなのに自分は寂しい状態にあると感じると、抑うつ気分が強くなります。

同じことが、みんなが楽しそうにしているゴールデンウイークにも起こりそうです。

■ゴールデンウイークに憂うつになる理由

○楽しそうなみんなの様子と比較してしまう

ゴールデンウイークだからといって、日本人全員が楽しく過ごしているわけではありません。しかし報道を見ていれば、いかにも楽しそうな人たちであふれています。そんな幸せそうな人と自分を比較して、気持ちが沈む人、うつっぽくなる人がいます。

○一人になる

家族や友達と楽しく過ごしている人はいいのですが、仕事や学校や休みになると一人になる人もいます。4月から一人暮らしを始めて、ゴールデンウイークに帰れない人は、一人暮らしが身にしみている人もいるでしょう。

一人暮らしはうつ病の危険性を8割高めるというフィンランドの研究もあります。

孤独な状態で考えていると、どうしても発想がネガティブになってしまいます。

○やることがない

遊ぶ予定もなし。仕事もなし。学校もなし。やることがありません。自分は一人、テレビやネットを見れば、楽しそうな人々がいます。こんな状態では、気持ちが沈むます。

○自分を見つめ過ぎることが抑うつを生む

「臨床社会心理学の研究によれば、自己注目のしすぎは抑うつ気分を高めます。やることもなく、家で一人で過ごしていると、人は自分自身のことを考え始めてしまいます。自分に注目し考えすぎると、人は現在の自分と理想の自分との差を感じ始めます。」(失敗する自分探し・成功する自分探し:自己注目と抑うつの心理学:Yahoo!ニュース個人有料:碓井)

人は自分自身を判断するときには、他者との比較をして考えます。ゴールデンウイークは、みんなが国内外の観光地に恋人や家族と出かけている報道でいっぱいです。どんどん自分が惨めに思えてきます。

■4月からの新生活に疲れている人

3月4月は変化の季節です。学校でも会社でも変化があります。引越しをした人もいるでしょう。別れと出会いがあります。誰もが、新年度はストレスがたまります。

それでも、人はがんばります。何とか新しい環境に適応しようとします。いつも以上に、4月は頑張ったことでしょう。そして、疲れがたまっています。新年度のスタートダッシュに失敗したと思っている人もいるでしょう。

その沈んだままの気持ちでゴールデンウイークに突入し、抑うつ気分を高めてしまう人もいます。休み明けの登校出社が辛くてたまらないということになれば、「5月病」です。

■ゴールデンウイークの過ごし方

疲れている時には休みましょう。ただ、本格的なうつ病でないなら、休めば良いわけではありません。その疲れの正体は何でしょうか。体の疲れでしょうか。

多くの体の疲れは、夕飯を食べ、風呂に入り、ぐっすり寝れば、翌朝にはなくなります。しかし、私たちが疲れ切っている時には、疲れているはずなのに食欲がなく、夜も眠れなかったりします。

私たちの疲れの多くは、心の疲れなのです。

心の疲れを取るためには、ゴールデンウイークに活動しましょう。一人ぼっちで閉じこもっていると、ますます元気がなくなります。

1寝だめをしない

疲れているからといって、昼まで寝るような生活をしてはいけません。人間は、寝だめはできないようになっています。寝坊をするときにも、普段より2時間遅く起きるのが、ギリギリのところです。それ以上の寝坊をすると、体内時計が狂い時差ぼけ状態になります。これでは、連休明けの気分は最悪です。

2体を動かす

運動は、身体の調子を整えるだけではなく、心の調子を整え、幸福感を高めます。スポーツをしている時には、行儀に集中するので、自分のことを考えすぎることも防ぎます。

一人なら、ジョキングとかスイミングやバッティングセンターバッティングセンターとか、一人でもできる運動も良いでしょう。

3日の光を浴びる

スポーツが苦手でも、散歩だけでもOKです。公園のベンチでのんびりするだけでも、部屋のカーテンを開けるだけでも、効果があります。うつ病の治療法として、「光療法」という光を浴びる治療法があるほどです。

4心を動かす

音楽を聴く、読書をする。ぼんやりとテレビを見るだけではなく、積極的に活動する心の動かし方です。映画を観に出かけることも良いでしょう。感動しましょう。

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散歩しながら、俳句を考えたり、写真を撮るのも、積極的に心を動かすために効果的です。

5交流する

一人ぼっちになることを避けましょう。家族や友人を活用しましょう。3月までの友人と交流するのも良いでしょう。新生活の愚痴もこぼしましょう。感情は一人で抱え込むことで、マイナスの力を強めます。みんなも同じように悩んでいることでしょう。交流し、感情を出すことで、抑うつ気分は晴れていきます。

■ストレス対処法

ストレスは、気づかないままに心と体を蝕みます。まず、自分のストレスに気づきましょう。ゴールデンウイークをのんびり過ごすことも良いことですが、何もする気がしないのは、ストレスで心が疲れている証拠です。

ストレスは、積極的な活動で癒していきましょう。

仕事もストレス、一人暮らしの家もストレス。これでは、人生のすべてがストレスです。より良い人間関係や、趣味の仲間など、苦しいストレスが少ない新し場所を作りましょう。

進学や就職で引っ越して、新しい町に来ているなら、ゴールデンウイークに観光地や新しい店に行ってみるのも、いいですね。

疲れている自分に、ちょっとごほうびを上げるゴールデンウイークにできれば、さわやかな5月が待っています。

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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