日航123便機墜落事故から30年:命を守る必死の努力:胸迫る機長の言葉と「ヘッドダウン、頭を下げて」

日航機墜落事故から30年(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

「胸に迫る」。そんなことはどうでもいい、ただ生きていてさえくれれば。あの事故さえなければ。ご遺族のみなさんは、そうお思いでしょう。それでも、事故から30年目の今年。多くの報道の中で、事故の悲惨さや、空の安全への思いとともに、その命をかけた最後の努力に、私たちは胸打たれます。

■ボイスレコーダー

 

機長   おい山だぞ

機関士  はいどうぞ

機長   ターンライト 山だ

副操縦士 はい

機長   コントロールとれ 右 ライトターン

機長   マックパワー(最大出力) マックパワー

機関士  がんばれー

機長   レフトターンだ レフトターン

副操縦士 はい

機長   パワーあげろ レフトターン

副操縦士 スピードがでてます スピードが

機長   ど一んといこうや

機長   がんばれ

副操縦士 はい

機関士  マック(出力最大)

機長   あたま下げろ

副操縦士 はい

機長   がんばれ がんばれ

副操縦士 いまコントロールがいっぱいです

機関士  マックパワー

副操縦士 スピードがへってます スピードが

機長   パワー パワー フラップ

機関士  上げてます

機長   あたま上げろ あたま上げろ パワー

火災警報音

地上接近警報音

機長の声

衝撃音

・・・

■命を守る必死の努力

飛行機は、すでにコントロールを失っていました。それでも、機長たちは乗客の命を守るために、最後まで任務を果たしました。

「命」は、一つしかない「命」は、失われてしまえば取り戻せません。けれど、病気や事故や災害など、どうしようもない巨大な力で、命は奪われていきます。私たちの努力などあざ笑うかのように。

それでも、私たちは大荒れの波間に漂う木の葉ではありません。私たちの舟は小さいけれど、オールも舵もついていて、毎日必死に生きています。

「毎日必死に生きている」。その姿勢の凝縮が、機長たちの言葉なのでしょう。

■前にかがんで 頭を下げて

生き残った方の証言によれば、日航123便の乗客の皆さんは、パニックで混乱することなく、異常発生から墜落の直前までの30分間、落ち着いて乗務員の指示に従っていました。ここでも、懸命の努力がされていたことでしょう。墜落直前には、衝撃に備えて「安全姿勢」の指示が出されていました。

下の動画は、まったく別の緊急着陸をした飛行機ですが、安全姿勢の指示を出している様子です。このときは、「念のため」ということで、結果的には通常着陸でしたが、緊迫した様子は伝わってきます。

「前にかがんで 頭を下げて!」。連呼し続けるキャビンアテンダントの声が、胸に迫ります(安全姿勢の指示連呼は、機体状況や安全姿勢の冷静な説明に続き、動画開始約10分後から始まっています)。

途切れると乗客がパニックになる可能性

 この壮絶な連呼、こういうシチュエーションでは一般的な対応なのでしょうか。

 国土交通省航空事業安全室によると、乗客の心理状態を考慮した、案内誘導の手法の一つだそうです。 

 緊急時には、機長やCAの指示が途切れると、乗客は「どうなったの?次に何をしたらいいの??」と、パニックになる可能性があります。

 そこで、「簡潔な言葉で、繰り返し、途切れずに指示を出す場合もある」とのことです。

出典:【緊迫の動画】ジェットスター機緊急着陸 CAの連呼がすごい:ウィズニュース2014年11月12日

実際にどの程度連呼するか、言葉はどうするのかは、各社による違いもあるようです。映画「ハッピーフライト」(2008年日本映画)は、コミカルな映画ですが、ラスト近くのシリアスなシーンでの安全姿勢指示の連呼「頭を下げて、ヘッドダウン! 」は、やはり胸迫るものがあります。

映画では、「ハッピーフライト」も「BRAVE HEARTS 海猿」(2012年日本映画:ジャンボジェットが海に不時着)も、全員が助かります。現実はもっと残酷ですけれども。

■最後まで

数年前に見た、NHKテレビ「ロボットコンテスト」(工学系の各学校作成ロボットのコンテスト)。その年の競技は、ロボットが形を変えながら障害物を乗り越えていく競争でした。先にゴールした方、または制限時間内に先まで進んだ学校が勝ち残っていきます。ところが、ある学校が作ったロボットがマシントラブルで変身できなくなります。競争はリードしていたのですが、もう先へは進めません。

ロボットは、乗り越えられない障害物にぴったりと体を寄せて、あとはライバルの動きを待つしかありませんでした。これが、ロボットと学生たちが今できる最大限の努力でした。

ただこれだけのシーンなのですが、妙に記憶に残っています。健康やお金や力を失っても、それでも最後まで、1ミリでも前に進むことの大切さを教えてくれたような気がします。

■最大限のことを

日航123便の事故では、機長らも亡くなっています。しかし、事故の犠牲者であると当時に飛行の責任者でもある機長への風当たりは強いものがありました。

しかし、コクピット内の会話が公開されて、世間の声も変わり始めます。素人が、この会話を聞いて何かを判断できるわけではありません。けれども、機長たちの必死の努力は伝わってきます。少なくとも、乗務員たちは最後の最後までがんばってくれたという事実は、大切な命が失われた事故にあっても、小さな慰めにはなったことでしょう。

機長も副操縦士も機関士も、キャビンアテンダントも乗客のみなさんも、最後まで各自ができる最大限の努力をしました。

日航123便の事故から、冷静に学ばなくてはならないこと、改善すべきことは多々あります。そして同時に、私たちは命について考えさせられます。

残された私たちは、最後まで最大限の努力を続けていきます。

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■ご遺族の思い

先日、日航機事故で3人のお子さんを亡くされた方のインタビュー記事が報道されていました。

日航機墜落30年 「死ぬまで帰り待っている」娘3人を失った両親、止まった時間:産経新聞 8月8日>

この記事に、下記のオーサーコメントを投稿しました。

死別の悲しみと共に生きて行くことを「グリーフワーク」(喪の作業)と言います。最も辛いのが子どもとの死別です。特に事件事故による突然の死別は、大きな衝撃です。さらに3人を同時に、そして大事故後の大混乱。心の傷が深くなる条件が揃いすぎです。

心理学的に見て、酒量が増えたり、記憶のない期間があったり、時に奇妙な行動をとってしまうのも、当然であり、自然なことです。周囲の言葉に深く傷つく二次被害も起きます。30年たちましたが、時間ですら心の傷を癒してくれません。

主観的には、何も癒されていないと感じることもあります。元には戻れません。それでも、あの最悪の時から比べれば、癒しは少しずつ起きているのでしょう。

良いインタービューに答えることは、癒しにもなります。520人という数字だけではわからない悲しみと人生があったことも、私たちは知ります。悲しみは続きますが、改善への努力も続いていくのです。

東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。HP『こころの散歩道』。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』など。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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