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「人を殺してみたかった」:19歳女子大生老女殺人事件の犯罪心理学1

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

■「人を殺してみたかった」「誰でもいいから殺したかった」

昔なら、「動機なき殺人」と呼ばれました。でも、今やこんな殺人も、10年に一度の事件ではなくなったのかもしれません。

また、事件は起きてしまいました。

名古屋市昭和区のアパートの一室で女性の遺体が見つかった事件で、愛知県警千種署は27日午後、アパートに住む女子大生(19)を殺人容疑で緊急逮捕した。「人を殺してみたかった」と容疑を認めている。

容疑は昨年12月7日昼ごろ、室内で、同市千種区春里町2の無職、森外茂子さん(77)の頭部を、おののようなもので殴るなどして殺害したとしている。

出典:<高齢女性遺体>アパート住人の女子大生を逮捕…殺人容疑 毎日新聞 1月27日

■殺人の動機

一般的なの殺人の動機は、怨恨など人間関係のもつれ、強盗など金目当て、あるいは他の犯罪を隠すためなどです。しかし、そのような、わかりやすい動機がない殺人もあります。

恨むような特定の人間関係もありませんし、相手が金を持っているわけでもありません。誰でもよかったわけです。昔なら、「動機なき殺人」ですが、現代だと、様々な心の問題が注目されます。そして、取調べの中での供述として「人を殺してみたかった」「誰でもいいから殺したかった」が報道されます。

■「人を殺してみたかった」「誰でもいいから殺したかった」の殺害動機

今回の事件は、まだ第一報が入っただけですので、詳細は不明です。ただ、容疑者は大学生ですから、今までの人生はそれなりに社会に適応してやってきたのでしょう。

誰でもいいと感じる殺人には、いくつかのパターンがあります。

このような猟奇殺人事件は、欧米では時おり発生していましたが、日本ではめったにありませんでした。日本が今後欧米のようになっていくのかどうかは、まだわかりません。

加害者への制裁、被害者遺族の保護に加えて、事件解明によって今後の類似事件を防止する方策を考えなくてはならないでしょう。

補足 21:50

自室で77歳殺害容疑=名大の19歳女子学生逮捕―「人を殺したかった」・愛知県警 時事通信 1月27日のオーサーコメントを書きました。

「時事通信は学校名を出していますね。またネット上では容疑者のSNSでの発言(真偽は未確認)が話題になっています。少年法の精神は守りたいと思いますが、全てを秘密にしてしまっては社会は犯罪から学べません。社会全体の冷静な態度が求められています。」

現代は、多くの人がネット上に発言を残しています。安易な拡散は、少年法の精神に反するするでしょう。しかしまた、加害者の心を考え、今後の類似事件防止を図る上で、大きな参考になる可能性もあるでしょう。

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BOOKS

藤井誠二著 『人を殺してみたかった―愛知県豊川市主婦殺人事件』

碓井真史著 『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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