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『アナと雪の女王』の心理学:レリゴーと個性(ありのままの姿)の本当の意味を読み解く

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

■「レリゴ~♪」(レット・イット ・ゴー)

「レリゴ~♪」(レット・イット・ゴー)が、世界中で大ブーム。アカデミー賞を取ったディズニーのアニメ映画『アナと雪の女王」』に登場する主題歌です。日本語版で松たか子さんが歌った「レット・イット・ゴー:ありのままで」も、大ヒットしました。

歌が映像がすばらしいだけではなく、「ありのままの姿見せるのよ」というテーマが、現代の私たちの思いにぴったりきたのでしょう。

大ヒット中のディズニー映画「アナと雪の女王」のミュージカルナンバーが歌える特別興行「みんなで歌おう♪歌詞付版」の上映が26日、全国約90館で始まった。

出典:「アナ雪」合唱上映は大好評「全然違う感動」「気持ちいい」 スポニチアネックス 4/26

■『アナと雪の女王』ストーリー(予告編以上のネタバレなし)

物語に登場する王女エルサは、触るものを凍らせてしまう魔法の力を持っています。でも、子どもの頃、その魔法の力で誤って妹アナを傷つけてしまって以来、彼女は自分の力を封印し、閉じこもります。魔法の力が発揮できないように手袋をして、どんなにアナが誘っても、決して部屋から出ませんでした(「雪だるまつくろう」)。

しかし、彼女はお城を出て、魔法の力を解放します。主題歌が流れるシーンは、手袋をはずし、魔法の力で氷のお城を作る場面です。王女になったエルサの力は、子どもの頃よりさらに強くなっていたのです。

ところが、その力が暴走し、王国は危機に陥ります。

さあ、アナと雪の女王の運命は? 王国の未来は? 愛の行方は?

■私たちにもある大きな力:個性

私たちには魔法の力はありませんが、それぞれ何かの力を持っています。腕力がある人、知識が豊富な人、細かいことに気づく人、大胆な決断ができる人、慎重な人。おしゃべりが得意な人や物静かな人。それぞれが、素晴らしい力を持っています。それは、個性と言っても良いでしょう。

それらの個性で、人を助け、仕事が上手くいくこともあります。

しかし、その個性、力があるからこそ、人を傷つけることがあります。自分が傷つくこともあります。腕力があれば、けんかで人を傷つけるかもしれません。頭が良い人で人を傷つける人はたくさんいます。口が達者だから、きついジョークや悪口で人を傷つけます。調子が良すぎて人を不愉快にさせる人もいます。

細か過ぎて人を怒らせる人もいますし、一言多くても一言少なくても、人間関係が悪くなることもあるでしょう。

成長すれば、さらに力は大きくなり、立派な仕事をするかもしれませんし、さらに人を大きく傷つけるかもしれません。

■個性を封印する(自分を嫌う)

個性がある故に、失敗し、人に嫌われることがあります。すると私たちは、時に自分を嫌い、力を封印します。傷ついた子ども時代の心(インナーチャイルド)を持ったまま、閉じこもり、自分を偽り、ありのままの姿を隠します。

「個性の時代」と言われているのに、個性を隠している人がたくさんいます。それぞれが所属する集団の「標準」から外れることを、恐れます。

個性とは、人とは違う部分です。個性こそが、「私」です。個性を嫌い封印することは、自分を嫌い、ありのままの私を否定することにつながってしまいます。

■レット・イット・ゴー:そのままで:Let It Go

『アナと雪の女王』の主題歌「レット・イット・ゴー」は、そのままの姿で生きて行こうと歌い上げます。私は自由だ、光を浴びて歩いていこうと。

私たちにはそれぞれの個性があります。私たちは、時に個性を誇りにし、時に自分の個性を嫌います。個性は、良い方向にも悪い方向にも使えるのですが、自分の個性を嫌ってしまうと、個性を良い形で活用することが難しくなります。

個性を嫌い、個性を活用できず、自分らしさを隠してしまうと、自分自身の価値を信じられなくなります。自尊心(セルフ・エスティーム:自己肯定感)が下がります。そうなってしまえば、閉じこもったり、自暴自棄になって乱暴な態度を取ってしまったりします。

私たちも、雪の女王エルサのように、自分の個性を解放しましょう。外交的でも内向的でも、にぎやかでも物静かでも、自分らしくその個性を活かせるはずです。

■「ありのまま」「そのまま」と努力

ありのままの姿、そのままでというのは、努力しなくても良いというわけではありません。『アナと雪の女王』の中でも、魔法の力を解放した女王エルサは、今まで試みたことのないチャレンジをします。その時、大きな力が発揮されます。

ありのまま、そのままは、存在自体に価値があるということです。個性あるあなたの存在自体がそのままですばらしいという意味です。手袋をして(個性を封印して)、部屋に閉じこもる(自分を隠し人間関係から退却する)現状のままで良いわけではありません。

存在自体に価値があるのですから、閉じこもっていても価値はあるのですが、その姿が本来のありのままの姿ではありません。

ありのまま、そのままで良いと本当に思えると、自分の個性に磨きをかけることが出来るようになるでしょう。人はそうして、なりたい自分になっていくのです。

■個性とコントロールと愛

個性を封印し閉じこもれば、傷つけ合うことはないかもしれません。でも、それでは誰も幸せになれません。しかし、大きな力ほど、コントロール(自己制御、セルフ・レギュレーション)が必要になってきます。

豪速球を投げられる人が、その力を隠すことは間違っているでしょう。でも誰彼かまわず豪速球を投げてしまえば、けが人が出ます。力を正しく発揮するためには、愛と思いやりが必要です。

怒りや不安に押しつぶされれば、あなたの個性は相手を傷つける鋭いトゲにもなってしまうでしょう。

私たちが幸せに強く正しく生きていくためには、力(個性)と愛が必要です。

美男美女、金持ち、腕力、知性。このような力をコントロールできず破滅する人はたくさんいます。力はあるけれど愛を失っている人は、力が暴走してしまいます。

アナとエルサの姉妹の愛。恋愛。友情。物語『アナと雪の女王』でも、大きなテーマは「愛」です。

雪だるまのオラフが言いますね。「アナのためなら溶けてもいいよ」。

私たちも、愛を知り、個性を十分に発揮していきたいと思います。それぞれの素晴らしい人生という物語の中で。

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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