交通事故を起こしやすい人とは:京都集団登校事故から安全教育を考える
暴走車、7m宙を飛ぶ…瞬間、児童しゃがみ込む
<京都集団登校事故>逮捕の18歳少年、ドリフト走行か
集団登校に車 「キュルキュルとすごい音」…児童が恐怖の瞬間振り返る
関係者の皆さんは、どれほど悔しい思いをしていることでしょうか。
事故の原因は、運転ミスのようです。交通事故の多くは、人間のミス(ヒューマンエラー)によって起きています。
■逮捕された18歳少年
報道によると、逮捕された18歳の少年は、昨年免許を取ったばかりでした。事故を起こしたスポーツカーは、自分の金で中古車を買ったと言います。
両親は、もっと普通の車で良いのではないかと諭したそうですが、「この車に乗るのが夢だった」と語り、親のアドバイスには従いませんでした。
昨年、レンタカーで追突事故を起こしています。落ちた物を拾おうとしての事故でした。父親によれば、この時もずいぶん叱ったようですが、少年の行動は改まりませんでした。
今回事故を起こしたスポーツカー(車種はフェアレディZに見えます)では、初心者マークを外していました。ハンドルやシフトレバーを自分好みの物に代えていました。フロントウインドーのところには、ナンバープレートのようなものが見えます(漫画「湾岸ミッドナイト」 の呪われた フェアレディZ のナンバーを模したものかと)。
以前から街中で乱暴な運転をしているところが目撃されています。事故発生時には、レースなどで高速でカーブを曲がるテクニックであるドリフト走行をしようとしてアクセルを踏みすぎ、事故を起こしたようです。
■違法ドライバー
車の改造自体は悪いことではありません。スポーツカーにあこがれることも、OKです。見た目をこだわるのも理解できます。しかし、いうまでもなく合法的なものでなければなりません。
現実には、若者でも誰でも、違法行為をすることはままあるでしょうが(だから違法なことをしても良いというわけではありませんが)、通常は総合的に判断して事故が起きないようにするものでしょう。彼は、その判断を大きく失敗します。
子どもが交通ルールを守っていても、どんなに車が進歩しても、りっぱな道路ができても、ドライバーがこんな運転をしてしまっては、事故は防げません。
■事故を起こしやすい人とは
自動車の運転は、テレビゲームではありません。反射神経の良い人が高得点を取れるのではありません。車の運転は、その人の性格、態度、判断、記憶、感情など、その人自身のあり方が問題になります。
反射神経の良い人が、かえって事故を起こしやすいという研究すらあるほどです。
交通事故に関する心理学の研究によれば、次のような人が事故を起こしやすい人です。
1 軽はずみな人。
2 見込みの甘い人(「(危険がある)かもしれない」運転ではなく「(多分大丈夫)だろう」運転をしてしまう)。
3 カッとなる、怒りっぽい人。
4 自分本位、独りよがり、協調性がない人。
5 危険なことをあえて行う性格
6 刺激や変化を求める性格
7 攻撃的性格
かっこ良くて、反射神経が良い、目立つのが好きといった人は、レーサー気取りの運転ができてしまうのかもしれませんが、それは決して上手な運転ではありません。
(交通安全に関する心理学の研究は日々続いています、)
■運転が上手い人とは
元F1レーサーの中嶋悟さんは、著書「交通危機の管理術」の中で、運転の基本を述べています。最も運転が上手いはずのレーサーが、公道を走るときには、高度なテクニックではなくて、基本を重視しています。
「安全運転の基本は、見ること、これに尽きます」。
もちろん、直接「見る」ことも大切です。交通心理学者の長塚康弘先生は、一時停止と左右確認こそが交通事故を防ぐポイントだと述べています。今回の少年は、一時停止をしなかったようです。
さらに、「見る」とは、状況全体を見通すことです。中島さんは「最悪の事態を想定する」ことだと述べています。
運転が上手い人とは、ハンドルさばきが上手い人ではなく、多くの危険が潜む公道を安全に走れる人です。そういう運転こそがかっこいいのだという「安全文化」が必要ではないでしょうか。
■交通安全教育
刺激を求め、思い切った行動が取れる人は、積極的で、時にイノベーションを起こしてくれるかもしれません。しかし同時に、危険な事故を起こしてしまうかもしれません。今回の少年も、18歳になってからの親の指導はなかなか届きませんでした。
交通事故を減らず方策は様々ありますが、最も大切なことは教育ではないでしょうか。
幼いころから、歩行者としての交通安全を守ります。「多分大丈夫だろう」と甘い判断をして赤信号を渡ったりしないようにします。自転車に乗るようになれば、被害者にも加害者にもならないような自転車安全教育が必要です。
自動車を怖がらせるのが目的ではありませんが、自動車の便利さ、魅力と同時に、危険性を教え込みます。
ある自動車学校の校長は、自分の学校で自転車安全教室を開き、そしておっしゃっていました。
「子どものころから交通安全教育を受けて、一時停止、左右確認といった行動が徹底して身についていると、自動車に乗るようになっても、自然にその行動が取れる。だから、子どもへの交通安全教育が大切なのです」。
教育は、ずいぶん気の長い話をしているように思われるかもしれませんが、交通安全に関する研究においても、やはり教育こそが最も重要だとされています。
被害者の子どもたちの一日も早い回復を祈っています。今回の事故を通して、加害者には責任を億ってもらわなくてはなりませんが、加害者を責めるだけで終わらず、交通安全へのさらなる一歩を進めたいと思います。
「この車に乗るのが夢だった」。夢を実現させるためには、大きな夢を抱くだけではなく、小さくて地味な努力の積み重ねが必要です。
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