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心配性と不安の正体:心理的メカニズムと克服法(梅雨時はチャンス!?)(心配性でもいいけどね)

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
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心配・不安・心配性とは

国語辞典(大辞泉)では心配とは「物事の先行きなどを気にして、心を悩ますこと」

不安とは「気がかりで落ち着かないこと。心配なこと」

心配と不安は似てますね。「心配性」は、いつも不安で心配している性格の人でしょうか。自分は心配性で困る、家族が心配性で困るといった話は良く聞きます。

心理学的な「不安」とは

不安は、以前から心理学の中の大きなテーマでした。心理学辞典によれば、不安とは「自己価値を脅かすような破局や危険の漠然とした予感」です。

不安に似た言葉に「恐怖」がありますが、不安よりも恐怖のほうが、具体的です。犬が怖い、痴漢が怖いと感じます。不安は、漠然と「夜道を歩くのは不安」となります。

映画『アフターアース』のテレビCMで、「危険は目の前にあるが、恐怖は心の中にある」と言っていますが、その通りです。客観的に見て危険性のある犬がそこにいるかいないかですが、どちらにせよ、犬にかまれるかもしれない恐怖を感じる人と感じない人がいます。

ただ、恐怖は具体的ですから、犬がいなくなれば怖くなくなりますが、不安は対象がはっきりしていないので、消すのも大変です。

犬にかまれる恐れは、たしかに誰もが怖いと感じるでしょうが、「テストが不安」は漠然としていて、そして人によって違います。入試や音楽の「歌のテスト」をたいして心配しない人もいれば、失敗によって「自己の価値が脅かされる」(もうダメだという感覚)を持ち、強い不安を感じる人もいるわけです。

いつも不安がって、自己の価値が脅かされると感じ続け、劣等感に悩み、チャレンジできなくなる人もいるでしょう。

心理学的な心配とは

心理学的に言うと、心配とは「否定的な情緒を伴った制御の難しい思考やイメージの連鎖」です。嫌な感じがする考えやイメージが次々わいてきて、自分でも抑えられない状態が「心配」です。

心配は不安(嫌な感じがする漠然とした予感)の一部と言えるでしょう(『パーソナリティ心理学ハンドブック』不安・心配)。

心配性とは

いつも心配しがちな人、いつも不安が高くなりやすい人は、「神経症的な傾向が高く、内向的」な人が多いようです。つまり、小さなことにも気づき、些細なことでも気になり、活発な行動よりも、いろいろ考えをめぐらす人です。

心配性な人たちは、そうでない人よりも、敏感な人です。いつも何かを気にかけています。何か困ったことが起きてしまわないように、いつも心配して用心をしているのが、心配性の人たちです。

心配性の人たちは、物事をネガティブに認知します。よく使われる例ですが、コップに半分の水が入っていると、楽天的な人は「まだ半分残っている」と感じますが、心配性の人は「もう半分しか残っていない」と感じます。

心配性の人は、ネガティブ(否定的)なものの見方、判断をして、ネガティブな感情を持ちます。たとえば、明日は家族でハイキングに行く予定だが天気予報の雨の確立は50パーセント。そんなとき、心配性の人は「きっと雨に違いない」と判断し、暗くて悲しい気持ちになってしまうのです。

心配性を克服するために

人間なかなか性格は直せません。心配性を直そうとしても、直せるものではないでしょう。しかし、心理学の研究によれば、同じように小さなことが気になってしまう人でも、ポイントは「意識を向ける注意のコントロール」だと言われています。

心配性の人は、いろいろなことを心配します。旅に出るときは、天気を心配し、迷子になることを心配し、強盗にあうことや、病気になることを心配します。そして、これらのことを考え続け、嫌なイメージがぐるぐると頭の中を回りはじめます。

このような、何を考えるか、何に注意を向けて、意識し続けるかを自分でコントロールできることが大切です。

心配性の良いところ

心配することは、悪いことではありません。明日は雨かもしれないと考えて、カサを用意したり、雨天用のBプログラムを考えておくことは、とっても大切です。もう水が半分しかないと思えなければ、新しい水の準備ができません。あなたの心配性が、みんなを救うのです。

心配性と共に

心配すること、考えることは正しいことです。でも、心配しすぎると問題が起きます。「明日のことは思いわずらうな」(聖書)です。思うのはいいですが、わずらっちゃ、いけません。明日は雨かもしれないけれど、雨具やBプログラムを用意した後は、自分の思いをコントロールして、それ以上ネガティブな考えや感情が生まれないようにしましょう。

あなたがどんなに夜も眠れないほど心配しても、明日の天気は変わりません。

心配性の人はしっかり者が多いですから、夜遅くまで、そして朝早くからピクニックの準備をするのです。でも、それなのに「あしたはどうせ雨よ。ピクニックには行けないのよ」などと暗い顔をして言い続けていたら、家族も楽しくありません。

「晴れるといいね」「きっと晴れるよ」とおしゃべりしながら、子どもと一緒にテルテル坊主を作りましょう。そのような活動を取ることが、雨のネガティブイメージで頭がいっぱいにならないようなコントロールにつながるでしょう。

それでも翌朝雨が降ったら。そのときはそのときです。家族みんなで残念がって、そして雨ならではの楽しみを探しましょう。

心配を流そう

心配事を考えすぎないようにコントロールする方法として、こんな方法もあります。

考えるなと言われても考えてしまうので、まず、考えましょう。考えた上で、頭の中で、流れる川をイメージしてください。次に川の上に舟を浮かべてください。そして、舟に「心配事」を乗せます。心配事を乗せた舟は、川を静かに流れていきます。「さようなら~」。心配事は、流れていき、見えなくなってしまいました。

心配をうまくコントロールさえできれば、あなたこそ頼りになる最強の人です!

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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