幽霊はなぜ「存在」するのか:森元首相が見た幽霊(首相公邸幽霊話と心理学)

安倍首相「森元首相は足を見た」=自身は都市伝説と否定的―公邸の幽霊話 時事通信

「森喜朗元首相がお化けの一部を見たという話も伺ったことがある。(幽霊には)足がないと言われているが、足の部分だけを見たと(聞いた)」。安倍晋三首相は1日放映の読売テレビ番組で、首相公邸に幽霊が出るとのうわさに関してこんなエピソードを紹介した。  もっとも、自身がうわさを信じているわけではないようで、番組で首相は「都市伝説」と指摘した。公邸に引っ越さずに私邸暮らしを続けていることと、幽霊のうわさ話との関係については「全く無い」と語った。

出典:安倍首相「森元首相は足を見た」=自身は都市伝説と否定的―公邸の幽霊話 時事通信 6月1日

首相公邸幽霊騒動 歴代首相も恐怖体験、小泉氏はお祓いも NEWS ポストセブン

公邸の幽霊「森元首相が一部を見たらしい」 安倍首相 朝日新聞デジタル

◎幽霊を見た!

人間にとって、「見たもの」ほど確かなものあはありません。誰が何を言っても、どんな偉い人が何を書いていても、自分が見た物は信じます。

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では、私たちは、何をどのように「見る」のでしょう。心理学的に考えると、人間の目(脳)は、見たい物を見ます。見ようとするものが見えます。意味のないものに意味や、まとまりをつけます。人間の目は、ただのカメラではないのです。

お腹がすいていると、雲がアンパンに見えたりします。お腹がすいていると、食べ物屋の看板が良く目に付きます。スーパーの食品が、みんなおいしそうに見えます。

以前のテレビの画面の「砂嵐」。ザーというホワイトノイズの画面。あれをじっと見つめていると、いろんなものが見えてきます。人間やら乗り物やらが、動いて見えます。もちろん何も映っていませんが、見えます。同じ画面を二人で黙って見つめてれば、それぞれの人がそれぞれ違うものを見るでしょう。

何でもない壁のしみが、怪談話を聞いて、心配や不安が高まった後は、女性の顔に見えたりします。

UFOも、幽霊も、信じている人は、目撃しやすくなります。何かがチラッと見えたとき、ある人は車のライトの反射と見ますし、ある人は幽霊、ある人はUFOと見えます。

場合によっては、もっとはっきりしっかり見えることもありますが。

ある漫画家は、徹夜で仕事をしているとき、高層マンションの窓から七福神が乗った「宝船」をはっきり見たそうです。ある芸術家は、海岸で街全体を覆うほどの巨大なUFOを見たと話してくれました。この方々は、マスコミや警察に話したりはしませんでしたが、確かに「見た」のです。

もしも、世の中で「宝船」の存在が議論されていて、調査隊が出動したり、マスコミが騒いでいたりしたら、この漫画家さんは「私は目撃した」とインタビューに答えていたかもしれませんね。

ちなみに、私は車の運転中に、ネコが道に出てきて、ニコッと笑ってクルッと回転して去っていったのを、「見ました」。

◎記憶の中の幽霊

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心理学の研究によれば、記憶は体験から生まれるだけではなく、作り出されます。認知心理学者で目撃証言や記憶の研究をしているロフタスは、目撃した後の情報によって記憶がゆがめられ、作られることを科学的に実証しています。

たとえば、犯罪者の顔を見たが混乱している目撃者たちに、「犯人はメガネをかけていました」というウソの情報を与えると、目撃者は犯人はメガネをかけていたと、すっかり思い込むのです。さらに、偏見や先入観が記憶をゆがめることもわかっています。

いったん記憶が作られてしまえば、思い出すほどに確信が増していきます。さらに具体的なことまで思い出してしまいます。

私が「見た」笑って踊るネコですが、ちらっとそんな気がしたのですが、面白がって人に話しいるうちに、私の頭の中でイメージがどんどん作られていくのがわかりました。

こんな大きな魚がつれたと、話すたびに魚の大きさが大きくなる人は、本当にその巨大魚を釣った気になっていきます。

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世の中には、宇宙人に誘拐された記憶をはっきり持っている人もいます。(『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』)

◎思い込みじゃない、たしかにそれは「起きた」

「気功」の研究をしていたある心理学者が、実験を行いました。その結果、気功師が気を送ったことにより、確かに人々が倒れました。何のトリックもなければ、倒れた人が演技したわけでもありません。たしかにその現象は「起きました」。しかし、実はこの気功師はニセモノでした。(『「人間」をめぐる「幽霊」の話』)

本物の気功師が、本当の気で人を倒すこともできるのかもしれませんが、ニセモノも同じ現象を起こせてしまいました。

こっくりさんは、本当に動きます。中学生ぐらいの女の子がやると、ぐりぐり動きます(暗示にかかりやすいから)。ところが、この子達に目隠しをして、この子達にわからないように、文字を書いた紙をずらしてしまうと、確かに動くのですが、文章にはなりませんでした。

先日、NHKのテレビで「守護天使」「守護霊」に関する研究(アメリカのドキュメンタリー番組)を紹介していました。危機的状況のとき、不思議な誰か(時には故人)が現れて助けてくれる現象です。科学的には脳による現象ですが、ただ同じような状況を作ってもなかなか再現はできないようです。そして、宇宙船の中で亡くなった父親に「出会った」医師は、私は確かに父に会い感動的な体験をしたと語っています。

◎科学(心理学)と幽霊と宗教

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迷信に惑わされてはいけませんし、それで不利益をこうむるのはまっぴらです。でも、脳の話にするだけにもいかないでしょう。恋する人の脳をどんなに科学的に説明しても、やっぱりすてきな恋はあるのです。

心霊現象を科学的に研究している人もいます。

面白おかしい幽霊話には乗せられない科学者も、まじめに信仰している人は大勢いますから。

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『科学者は神を信じられるか:クォーク、カオスとキリスト教のはざまで (ブルーバックス)』

『科学者とキリスト教:ガリレイから現代まで (ブルーバックス)』

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  • 『 超常現象の科学 なぜ人は幽霊が見えるのか』
  • 『不思議現象 なぜ信じるのか―こころの科学入門』
  • 『超常現象をなぜ信じるのか―思い込みを生む「体験」のあやうさ (ブルーバックス)』
  • 『超常現象の心理学―人はなぜオカルトにひかれるのか (平凡社新書) 』
  • 『人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか (認知科学選書) 』
  • 『血液型と性格 』:血液型性格論のどこが間違いか、なぜ流行ったのか、心理学的に解説。
  • 『きつねつきの科学―そのとき何が起こっている? (ブルーバックス) 』
  • 『大槻教授の最終抗議 (集英社新書) 』
  • 『オカルト徹底批判 (朝日ワンテーママガジン 28) 』
  • 『幽霊を捕まえようとした科学者たち 』
  • 『科学者は神を信じられるか―クォーク、カオスとキリスト教のはざまで (ブルーバックス)』
  • 『科学者とキリスト教―ガリレイから現代まで (ブルーバックス)』
  • 『科学が宗教と出会うとき―四つのモデル 』
  • 『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか (ハヤカワ文庫) 』

東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。テレビ新潟番組審議委員。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。HP『こころの散歩道』は総アクセス数5千万。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』など。監修:『よくわかる人間関係の心理学』など。

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