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「美 少年」が熱演する、ジャニーズと東映の「ハイブリッド・ドラマ」

碓井広義メディア文化評論家
戦隊ヒーローのイメージ(提供:アフロ)

7月31日(土)の夜、ジャニーズJr.の「美 少年」が主演する、『ザ・ハイスクールヒーローズ』(テレビ朝日系)の第1話が放送されました。

物語の舞台は、小中高一貫教育の五星学園(いつぼしがくえん)。

高等部3年の真中大成(岩崎大昇)は、「ゴレンジャー」オタクで、「学園防衛部」という名の部活をしています。部員は1人だけですが。

大成は子どもの頃、学園内で「魔人」に遭遇したことがあり、その時、救ってくれたのがヒーローでした。

以来、ヒーローの存在を信じ、魔人から学園を守ろうとしている。周囲からは、ただの「ヒーロー好きのオタク」と思われていますが、大成って、なかなかいいヤツです。

第1話に登場した魔人は、野球部の2年生が変身したものでした。彼は、自分より能力で劣っているくせに、互いに助け合ってレギュラーに居座る3年生が許せなかった。

野球の硬式ボールが肥大化したような頭。大きく裂けた口には牙。「野球魔人」となった彼は、巨大なバットを武器にして、憎い3年生を襲います。

大成の亡き父が言っていました。

「人は心が弱って道を踏み外したとき、誰かを傷つける魔人になってしまう」。

大成は「アカヒーロー」に変身し、魔人と戦います。バトルアクションは本格的で、十分見応えがありました。さすが東映さん。

助けられた野球部3年の滝川雄亮(那須雄登)は、大成に恩を感じて、「アオヒーロー」に志願します。

これで戦隊メンバーは2人になりました。次回以降も徐々に増えていくというわけです。

「美 少年」の面々も、それぞれの役柄を自分のものにして熱演。このドラマを楽しんでいるのが分かります。

そうそう、第1話の中で、戦隊ヒーローのモットーとして、次の言葉が披露されました。

「力と技と団結!」

これって、46年前に放送されていた、『秘密戦隊ゴレンジャー』の中に出て来た名言なのです。よくぞ、発掘&継承してくれました。

アカレンジャーもこのドラマに堂々の出演を果たしており、ゴレンジャーに対する熱いオマージュを感じます。

さらに、美 少年の脇を固めるのは、五星学園の学園長に柳葉敏郎さん。大成の母が中山美穂さん。おかげで、ドラマ全体の厚みが増しています。

それにしても、面白いことを考えたものです。「戦隊ヒーロー」と「学園ドラマ」を合体させるとは! 

しかも日曜朝の定番というイメージが強い「戦隊ヒーローもの」を、土曜の夜に流そうという発想も面白い。

2019年の『トクサツガガガ』、今年6月の『超速パラヒーロー ガンディーン』など、最近はNHKも力を入れている、「特撮」と「ヒーロー」。

ジャニーズと特撮の老舗・東映が組んだ「ハイブリッド・ドラマ」。このトライの行方に注目です。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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