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【ギャラクシー賞】は、この1年を代表する「ドラマ」に何を選んだのか?

碓井広義メディア文化評論家
筆者撮影

「ギャラクシー賞」は、放送界における大きな賞のひとつです。

テレビ、ラジオ、CM、報道活動の4つの部門があり、さらに特別賞、個人賞などが設けられています。

4月30日、主催する放送批評懇談会が、第58回「ギャラクシー賞」の「入賞」作品と「奨励賞」作品を発表しました。

対象となっているのは2020年度、つまり20年4月~21年3月の1年間に放送されたものです。

放送批評懇談会では毎月の選考を行っており、何本かの「月間賞」を決めています。

この月間賞全体の中から「入賞」作品を選び、それ以外が「奨励賞」となります。

そして、「入賞」作品の中から、さらに選ばれたものが各部門の「大賞」というわけです。

大賞は、6月2日に行われる贈賞式で発表されます。

2020年度のドラマ

ギャラクシー賞では、テレビ番組もラジオ番組も、ジャンルで分けていません。

テレビ部門には、報道番組、ドキュメンタリー、バラエティ、ドラマなどが混在しています。

今回、テレビ部門の「奨励賞」は67本。そのうちドラマは13本です。

また「入賞」は14本で、ドラマは5本でした。

奨励賞13本に、入賞5本を加えた計18本が、ギャラクシー賞が選んだ「2020年度を代表するドラマ」ということになります。

「奨励賞」の13本

まずは、「奨励賞」です。

ドラマ&ドキュメント「不要不急の銀河」

(NHK)

国際共同制作 特集ドラマ「太陽の子」

(NHK)

光秀のスマホ

(NHK)

土曜ドラマ「ノースライト」

(NHK)

岸辺露伴は動かない

(NHK)

宮城発地域ドラマ「ペペロンチーノ」

(NHK)

よるドラ「ここは今から倫理です。」

(NHK)

火曜ドラマ「私の家政夫ナギサさん」

(TBS)

知らないのは主役だけ

(関西テレビ)

ドラマスペシャル「スイッチ」

(テレビ朝日)

土曜ナイトドラマ「妖怪シェアハウス」

(テレビ朝日)

木ドラ25「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」

(テレビ東京)

ドラマ25「直ちゃんは小学三年生」

(テレビ東京)

まず、ざっと見渡して、約半分を占めている、NHKの7本が際立ちます。

「太陽の子」のような大作から、「ペペロンチーノ」のような地域発のものまで多彩です。

次に深夜ドラマの健闘。タイムシフトを含め、ドラマの視聴スタイルも変わってきました。

かなり深い時間帯の放送であっても、面白ければ、何らかの方法で必ず見てもらえる時代です。

「入賞」した5本

次が、「入賞」作品となった5本のドラマです。

金曜ドラマ「MIU404」

(TBS)

金曜ドラマ「俺の家の話」

(TBS)

世界は3で出来ている

(フジテレビ)

オトナの土ドラ「その女、ジルバ」

(東海テレビ)

浜の朝日の嘘つきどもと

(福島中央テレビ)

TBS、それも金曜ドラマ枠の作品が2本あります。

「MIU404」は、それまでの刑事ドラマとは一線を画していました。

「俺の家の話」もまた、新機軸のホームドラマでした。

どちらも新たな創造に挑み、その成果をしっかり示してくれた作品だったと言えるでしょう。

現在、TBSが持つドラマ制作力の高さが見えるようです。

「世界は3で出来ている」は、林遣都さんが一卵性三つ子役、つまり一人三役を演じたソーシャルディスタンスドラマ。

実験的・野心的でありながら、完成度の高い作品でした。

また東海テレビ「その女、ジルバ」は、原作漫画の世界を超えて、ドラマならではの味わいに到達しています。

特に主演の池脇千鶴さんの演技は見ものでした。

そして、福島中央テレビが制作した「浜の朝日の嘘つきどもと」に登場するのは、売れない映画監督(竹原ピストル)。南相馬市の古い映画館「朝日座」のモギリ嬢(高畑充希)。

川島が、お金持ちの未亡人(吉行和子)から「映画を作って」と頼まれて……という物語でした。「朝日座」は実在の映画館です。

ちなみに、福島中央テレビは日本テレビの系列局ですが、「浜の朝日の嘘つきどもと」を関東で放送したのは、テレビ神奈川、千葉テレビ、TOKYO MXでした。

札幌テレビや福岡放送も放送しましたが、日本テレビは流していません。残念なことです。

選ぶこと、選ばないこと

お気づきかもしれませんが、奨励賞にも入賞にも、話題と視聴率では断トツだった、TBS「半沢直樹」がありません。

いや、それ以上に注目したいのは、日本テレビのドラマが1本もないことです。

たとえばですが、「ハケンの品格」も「35歳の少女」も見当たりません。

賞というものは、「選ぶ」理由だけでなく、「選ばない」ことにも理由があります。「評価しない理由」と言ってもいい。

このあたり、選ぶ側のドラマに対する「見方」や「考え方」を反映しているようで、「選ばれなかった作品」と「選ばれなかった理由」には、とても興味深いものがあります。

前述のように、「入賞」作品は、ドラマ以外のジャンルも合わせて14本あります。

テレビ部門の「大賞」に選ばれるのは、その中の1本ですから、5本のドラマがどうなるか、それは分かりません。

コロナ禍に揺れ続けた2020年度の1年間。

見る側が普段のドラマ以上に、さまざまなものを受け取ったのが、この5作品だったのではないでしょうか。

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追記:

2日(日)夜、松本深志高校時代に教えを受けた、山本伍朗先生のドキュメンタリーが全国放送されます。

この作品は第58回「ギャラクシー賞」の奨励賞を受賞しました。

NNNドキュメント’21

「ホームルーム~伍朗ちゃんがいる教室~」

長野県の松本深志高校を1976年に卒業した3年8組だけは、卒業から40年以上たっても、年に1度母校に集うホームルームを開く。

教壇には、伍朗ちゃんと呼ばれるかつての担任、小さな机につくのは社長や官僚、教師などになった大人たち。

毎回、伍朗ちゃんから哲学の話を聞き、人生を語り合う。いくつになっても戻りたい、まさに“ホーム”な空間だ。

この教室から、戦後日本に導入されたホームルームの本質が見えてくる。(番組サイトより)

5月2日(日)

24時55分からの30分です。

長野県内では昨年、放送されましたが、今回は「NNNドキュメント’21」の枠なので、制作した「テレビ信州」はもちろん、全国の日テレ系で視聴できます。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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