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大河ドラマ『青天を衝け』の主人公、渋沢栄一が創った「会社」はどこ?

碓井広義メディア文化評論家
渋沢が創設した一つ「帝国ホテル」(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

2月14日(日)から、新たな大河ドラマ『青天を衝(つ)け』が始まります。

戦国時代の明智光秀から一転して、舞台は近代です。主人公は、渋沢栄一。

実は、というほどのことではありませんが、2月13日は、渋沢の「誕生日」でした。

おめでとうございます、渋沢翁!

渋沢が生まれたのは、1840年2月13日。181年前のことです。実家は、現在の埼玉県深谷市にあった農家でした。

1840年というのは天保11年。歴史の教科書に出てくる、老中・水野忠邦の「天保の改革」の天保時代に生まれたわけです。

渋沢がすごいなあと思うのは、天保11年に生まれて、弘化、嘉永、安政、万延、文久、元治、慶応、明治、大正、そして昭和6年まで生きたことです。享年91。

現在、91歳の人はたくさんいますが(私の母もその一人です)、生きてきたのは昭和、平成、令和という3つの時代です。同じ91年で、11もの時代を経験した、渋沢のような人はいません。

11の時代の経験者というだけでも、何を見てきたのか、一度話を聞いてみたくなります。

もちろん話は聞けませんので、今回の大河ドラマを通じて、渋沢が歩んできた、それぞれの時代を追体験できたらと思っています。

何しろ渋沢は、11の時代を生きただけでなく、現代社会につながる、いくつもの事業を興した人物。どんなジャンルでも、「初めて物語」が面白くないはずはありません。

渋沢が、その創設に奔走したという会社は、500社を超えます。1人の人間が、どうやったら、そんなことが可能なのか。それは今後、この大河ドラマで分かってくるのでしょう。

ここでは、渋沢が創設した会社の「一端」を挙げてみました。当時と現在の社名を見るだけでも興味深いものがあります。

<金融・保険>

・第一銀行→みずほ銀行

・東京貯蓄銀行→りそな銀行

・東京海上保険→東京海上日動火災保険

・万歳生命保険→マニュライフ生命保険

<ガス・電気>

・東京瓦斯→東京ガス

・広島水力電気→中国電力

<ホテル・劇場>

・帝国ホテル→帝国ホテル

・帝国劇場→東宝

<陸運・海運>

・日本鉄道→JR東日本

・北海道鉄道→JR北海道

・東洋汽船→日本郵船

<造船・鉄鋼>

・東京石川島造船所→IHI

・東京製綱→東京製綱

<綿業>

・大阪紡績→東洋紡

・京都織物→エコナックホールディングス

・東京帽子→オーベスク

<製紙・出版>

・中央製紙→王子製紙、日本製紙

・中外商業新報社→日本経済新聞社

<窯業>

・浅野セメント→太平洋セメント

・品川白煉瓦→品川リフラクトリーズ

<その他>

・大日本麦酒→サッポロビール、アサヒビール

・日本皮革→ニッピ

・澁澤倉庫→澁澤倉庫

いやはや、なかなかのラインナップではありませんか。「近代日本経済の父」「日本資本主義の父」などと呼ばれるのも頷けます。

では、これらを含む500社もの会社創設が、どのように行われたのか。そもそも「実業家」とは何をする人なのか。

また、実業家の誰もが「一万円札」や「大河ドラマ」になるわけじゃない。渋沢は、他の実業家と何が同じで、何が違っていたのか。その人物像は?

あれやこれやの興味や素朴な疑問に、大河ドラマ『青天を衝け』が答えてくれるのを楽しみにしています。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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