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『アンナチュラル』脚本の野木亜紀子さん、芸術選奨「文部科学大臣新人賞」受賞!

碓井広義メディア文化評論家
贈呈式で野木亜紀子さんと(筆者撮影)

3月12日の午後、東京・永田町の都市センターホテルで、文化庁「芸術選奨」の贈呈式が行われました。

「放送部門」の選考審査員を務めさせていただいていることから、この式に出席してきました。

選考審査員は私のほかに、岡室美奈子さん(早大教授)、上滝徹也さん(日大名誉教授)、鈴木嘉一さん(放送評論家)、竹山洋さん(脚本家)、藤田真文さん(法大教授)、八木康夫さん(プロデューサー)の各氏。

ということで、「放送部門」の報告です。

芸術選奨「放送部門」文部科学大臣新人賞は、脚本家の野木亜紀子さん

芸術選奨「放送部門」の文部科学大臣新人賞を受賞したのは、ドラマ『アンナチュラル』(TBS系)の脚本家、野木亜紀子さんです。

選考審査会での議論をまとめた「選考理由」は、以下の通りでした。

「野木亜紀子氏は、ドラマ『アンナチュラル』において、架空の「不自然死究明研究所(UDI)」を舞台に、不条理な死に立ち向かう法医解剖医を主人公としながら、単なる謎解きのサスペンスドラマとは一線を画し、遺された者たちがいかに生き続けるかを問い掛けた。自殺系サイトや長時間労働、いじめ等の今日的な問題を織り交ぜつつ、解剖医たち自身が「生きるとは何か」という根源的な問いに向き合うプロセスを、卓抜な構成力により描き切った氏の手腕が高く評価された」(文化庁発表資料より)

『アンナチュラル』の出現は、2018年のドラマ界の大きな“事件”だったと言っていいと思います。

「ドラマというのは、ここまで出来るんだ」という、いわばドラマの可能性を広げた1本でした。

芸術選奨「放送部門」文部科学大臣賞は、プロデューサーの伊藤純さん

そして、芸術選奨「放送部門」の文部科学大臣賞は、NHK『新日本風土記』プロデューサーの伊藤純さんに贈られました。

伊藤さんの「選考理由」は、以下のようになります。

「伊藤純氏は、長年、歴史、文化、自然科学など、多岐にわたるテーマで数多くの秀作ドキュメンタリーを制作。氏のライフワークとも言える『新日本風土記』は、平成30年で250回の放送に及ぶ。美しい映像でつづる日本各地の原風景、そこに暮らす人々の姿、今も伝わる風習は、改めて日本人としての誇りを実感させられる。平成30年は、明治維新から150年に当たり、「明治維新への旅」や「古事記への旅」など、従来の地域ものにとどまらず、企画の幅も広がった。番組の新しい可能性を期待させた」(文化庁発表資料より)

「近頃のテレビ、見たいものが少なくて」といった感想を述べる、“大人の視聴者”の方々が、「でも、これは見ている」とおっしゃる頻度が極めて高いのが、『新日本風土記』です。

知っている土地、知らない土地にかかわらず、見ていて、日本や日本人についての発見や再発見が、これほどたくさんある番組も珍しい。

そして、「人間って、いいなあ」と思わせてくれることも、たびたびです。

もしもこの賞が、『新日本風土記』を、これからも長く見せてもらえることにつながるのであれば、選ばせていただいた者として、それ以上に嬉しいことはありません。

野木さん、伊藤さん、本当に、おめでとうございます!

伊藤純さんと(筆者撮影)
伊藤純さんと(筆者撮影)
メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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