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失点率で順位を決めるのはおかしい!? わざと試合に負けて準々決勝へ進むこともできた〈WBC〉

宇根夏樹ベースボール・ライター
マイク・トラウト Mar 15, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 3月15日(日本時間16日)、アメリカは、3対2でコロンビアを下し、3勝1敗として準々決勝進出を決めた。アメリカの通過順位は、同じく3勝1敗のメキシコに次ぐ、プールCの2位だ。アメリカは、メキシコに黒星を喫した。

 もし、アメリカがコロンビアに敗れていれば、アメリカ、コロンビア、カナダの3チームが2勝2敗で並んでいた。この場合、直接の対戦はいずれも1勝1敗――アメリカは、カナダ戦が白星、コロンビア戦は黒星――なので、その2試合の失点率によって順位が決まることになっていた。

 アメリカは、3対2で9回裏を迎えた。三塁ゴロと外野フライに続き、内野安打で2死一塁。最後は三振で試合終了ながら、ホームランが出ていれば、アメリカはサヨナラ負けを喫していた。

 ただ、そうなっても、準々決勝に進むのはアメリカだった。

 アメリカは、カナダ戦が1失点(21アウト/7回コールド)でコロンビア戦は4失点(26アウト/9回2死まで)。失点率は、5失点(1+4)÷47アウト(21+26)=.106となる。それに対し、コロンビアは、カナダ戦が5失点(27アウト)、アメリカ戦が3失点(27アウト)なので、失点率は、8失点(5+3)÷54アウト(27+27)=.148。カナダは、アメリカ戦が12失点(18アウト/7回裏のアメリカの攻撃はなし)、コロンビア戦は無失点(27アウト)。失点率は、12失点(12+0)÷45アウト(18+27)=.267だ。

 ちなみに、アメリカは、9回裏に2死から3対5でコロンビアに敗れても、失点率は.128。コロンビアとカナダより低かった。

 3対2の9回裏、2死一塁から、アメリカには、そうすることはまずないだろうが、こんな方法もあった。4人続けて敬遠四球で歩かせ、連続の押し出し四球により、3対4でサヨナラ負け。そして、失点率でコロンビアとカナダを凌ぎ、準々決勝へ進む――。

 コロンビアは、2死一、三塁もしくは2死二、三塁としても、3ラン本塁打ではアメリカの失点率のほうが低いまま。ヒットが出ても、三塁走者はサヨナラのホームを踏まず、三塁にとどまって満塁にする必要があった。

 9回裏の2死から、コロンビアが、アメリカの失点率を下回るには、満塁とした後にホームランを打つ(6対3)、3対3の同点に追いついた上で3ラン本塁打か満塁本塁打を打つ(6対3か7対3)、同点→満塁→三塁打(6対3)に、3対3の同点で9回裏を終え、延長戦でアウトの数を増やして失点率を下げつつ、サヨナラ勝ちを収めるしかなかった。これらのうち、最後の延長戦は、コロンビアだけでなくアメリカが奪うアウトも増える――さらに、コロンビアの失点も増える可能性がある――ので、あまり現実的ではない。

 なお、5回表を迎えた時点では、コロンビアが2対1とリードしていた。ただ、このスコアで勝っても、コロンビアの準々決勝進出はなかった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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