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送りバントは絶滅危惧種!? このチームは昨年162試合で1本だけ

宇根夏樹ベースボール・ライター
マイケル・ハリス2世(アトランタ・ブレーブス)Sep 19, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨年、アトランタ・ブレーブスは、珍記録を樹立した。レギュラーシーズンの162試合中、犠牲バントは1本だけ。それも、160試合を終えた時点では0本だった。それまで、19世紀の記録がはっきりしないシーズンと1チーム60試合に短縮された2020年を除くと、1シーズンに犠牲バントが4本未満のチームはなかった。1本ではなく0本なら、もっと話題になっていたに違いない。

 また、ブレーブスの3倍ながら、ロサンゼルス・ドジャースの犠牲バントも、3本しかなかった。メジャーリーグ全体において、2022年は犠牲バントが激減した。2021年の766本に対し、2022年は390本だ。これは、ナ・リーグもDHを採用し、投手が打席に立たなくなったのが理由だが、その前から、犠牲バントは減少の傾向にある。2001年以降の本数は、2001~11年の各シーズンが1500本以上、2012~16年が1000本以上1500本未満、2017~22年は1000本未満。直近の6シーズンは、925本→823本→776本→126本(2020年)→766本→390本と推移している。2022年に30本以上の犠牲バントを記録したチームは、31本のアリゾナ・ダイヤモンドバックスしかなく、ブレーブスとドジャースを含む10チームは一桁にとどまった。

 この減少は、さらに加速する可能性もありそうだ。

 三塁に走者がいる状況――他の塁にも走者がいる状況を含む――の犠牲バント、ほぼすべてがスクイズは、すでに絶滅しかけている。2021年は60本、2022年は27本だった。1チーム平均2本と1本未満だ。

 それ以外の犠牲バント、送りバントについては、アウトを増やして走者を進めるのは有効な手段ではない、という認識が広まっている。

 例えば、アウトの数と走者の人数と位置を組み合わせた状況――3×8=24パターン――のそれぞれから、イニングが終わるまでに平均何点が入ったかを示す、得点期待値は、「無死一塁から」と「1死二塁から」を比べると、基本的に、後者のほうが少ない。各状況から、イニング終了までに1点が入る確率を示す、得点確率も同様だ。

 なお、昨年のブレーブスで唯一の犠牲バントは、マイケル・ハリス2世が記録した。1対0とリードして迎えた4回表、無死一、二塁の状況で、三塁側に転がし、1死二、三塁とした。ハリス2世は、しっかりとバントの構えをし、両足を地につけたまま、バットに投球を当てた。

 ブレーブスは、この試合に2対1で勝ち、地区5連覇を飾った。ただ、4回表は、ハリス2世に続く3人が、三振、敬遠四球、三振でイニング終了。送りバントは、得点につながらなかった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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