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二桁の借金を抱える球団が、37歳の投手をトレードで放出せず、2年1900万ドルの延長契約を交わす

宇根夏樹ベースボール・ライター
ダニエル・バード(コロラド・ロッキーズ)Jul 7, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 コロラド・ロッキーズは、二桁の借金を抱えている。ワイルドカードの3番手までは、8.5ゲーム差だ。そのなかで、クローザーのダニエル・バードは、1点台の防御率を記録している。バードの年齢は37歳。今オフにFAとなる。

 この夏にトレードで放出する要素は、すべて揃っているように見える。だが、ロッキーズはそうしなかった。7月30日、2年1900万ドルの延長契約を交わしたことを発表した。

 昨オフ、ロッキーズは、クリス・ブライアントを7年1億8200万ドルの契約で迎え入れた。また、5年以上の延長契約が今シーズンから始まった選手も少なくない。来シーズンは――今シーズンもそうだったのだろうが――ポストシーズン進出をめざすということだ。当然ながら、クローザーは必要になる。

 ここでバードを放出して見返りを得て、来シーズンに向けては、バードを含め、FA市場に出ているクローザー(あるいはクローザーを務められそうな投手)と契約を交わす方法もある。

 ただ、ロッキーズがホームとしているクアーズ・フィールドは、打球がよく飛ぶ打者天国だ。そのため、複数の球団が欲しがるFAの投手を手に入れるのは、他球団よりも難しくなる。例えば、ロッキーズと他球団から同じ契約を提示された場合、ロッキーズに入団する投手はいるだろうか。いるとすれば、どうしても故郷のデンバーで投げたいなど、何か特別な理由があるとしか思えない。

 それゆえ、年齢によるリスクを考慮しても、ロッキーズは、バードを引き留めることにしたのではないか。この契約延長が成功となるかどうかはさておき、シンカーとスライダーを投げ、多くのゴロを打たせるバードは、クアーズ・フィールドに向いている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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