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この選手が本塁打ランキングの1位にいるのは「打者天国」のおかげなのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
C.J.クロン(コロラド・ロッキーズ)May 1, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 C.J.クロン(コロラド・ロッキーズ)は、ナ・リーグ本塁打ランキングのトップに位置している。5月18日のホームランにより、ナ・リーグ一番乗りで二桁に到達。その後、ピート・アロンゾ(ニューヨーク・メッツ)とクリスチャン・ウォーカー(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)、カイル・シュワーバー(フィラデルフィア・フィリーズ)に並ばれたが、5月21日に11本目を打ち、再び単独トップに立った。なお、5月22日を終えた時点の2位は4人だ。ムーキー・ベッツ(ロサンゼルス・ドジャース)も、二桁に到達した。

 ここまで、クロンは、ロッキーズの40試合すべてに出場している。ホームのクアーズ・フィールドで25試合、アウェーは15試合。サンプル数の少なさと試合数の違いを踏まえても、ホームのクロンとアウェーのクロンは、まるで別人だ。ホームで9本とアウェーで2本のホームランだけではない。打率は.398と.211、出塁率は.444と.250、OPSは1.189と.654だ。

 クロンは、今シーズンがロッキーズ2年目。昨シーズンも、ホームとアウェーのスタッツには差があった。ホームランは19本と9本。打率は.326と.235、出塁率は.412と.337、OPSは1.073と.734だった。

 2018年にタンパベイ・レイズで30本塁打、2019年はミネソタ・ツインズで25本塁打を記録していることからわかるとおり、パワーそのものに疑問符がつくわけではない。だが、ここ2シーズンとも、打者天国のクアーズ・フィールド以外では、あまり打てていない。

 昨年2月にロッキーズとマイナーリーグ契約を交わし、その8ヵ月後、クロンは2年1450万ドル(2022~23年)の延長契約を手にした。現在の年齢は32歳だ。このまま、ホームで打ち続けたとしても、同じように、アウェーでは打てなければ、来シーズンの終了後にFAとなった際、他球団から高く評価されることはないだろう。その前にロッキーズがトレードで放出しようと試みても、欲しがる球団はないかもしれない。

 なお、まだ気が早いものの、クロンが本塁打王を獲得すると、ロッキーズでは延べ7人目となる。過去の6人は、1995~97年に3人続けて本塁打王となった、ダンテ・ビシェットアンドレス・ガララーガラリー・ウォーカーと、2015~18年の4シーズンに本塁打王3度のノーラン・アレナード(現セントルイス・カーディナルス)だ。クアーズ・フィールドは、1995年にオープンした。1995~2021年のスパンに、1チームから本塁打王が6人は、ニューヨーク・ヤンキースの5人を凌ぎ、どのチームよりも多い。

 本塁打王の6人を含め、ロッキーズでシーズン35本塁打以上を記録した27人中、過半数の15人は、そのシーズンのホームランの60%以上をホームで打った。それに対し、アウェーで60%以上は、2004年のビニー・キャスティーヤしかいない。35本塁打の内訳は、ホームで14本とアウェーで21本なので、アウェーの割合はちょうど60.0%となる。あとの26人は、アウェーのホームランが60%未満。3分の1以下(33.3%以下)――ホームの割合が3分の2以上――も8人いる。

筆者作成
筆者作成

 ちなみに、現時点でクロンに次ぐ10本塁打の4人は、アロンゾとベッツがともにホームとアウェーで5本ずつ、ウォーカーは4本と6本、シュワーバーは2本と8本だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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