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600本以上のホームランを打っている選手が登板するのは、プーホルスが史上初!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
アルバート・プーホルス(セントルイス・カーディナルス)May 15, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5月15日、DHとして出場していたアルバート・プーホルス(セントルイス・カーディナルス)は、9回表のマウンドに上がった。

 今シーズンは、メジャーリーグ22年目。過去に登板したことはなかった。通算本塁打は681本を数え、歴代5位に位置する。

 初登板の時点で、プーホルスよりも通算本塁打が多かった選手はいない。これまでは、アダム・ダンの本数が最も多く、457本のホームランを打った後、2014年8月5日に投手としてデビューした。ダンは、ジミー・フォックスが初めて投げた時の通算本数を1本上回った(1939年8月6日/456本)。もちろん、偶然ではないはずだ。

 ただ、初登板に限らなければ、プーホルスの通算本塁打は、登板時の最多ではない。ベーブ・ルースが最後に投げたのは、1933年10月1日だ。マウンドに上がる前の通算本塁打は、685本だった。3年ぶりに登板したルースは、5点を取られたものの、9イニングを投げきり、通算94勝目を挙げた。5回裏には、通算686本目のホームランも打った。

 プーホルスが再び登板し、ルースの記録を塗り替えるかどうかはわからないが――そうはしない気がする――プーホルスは今シーズン限りで引退する予定だ。今回の投手デビューは、ダンがそうだったように、思い出作りのようなものだろう。

 また、プーホルスの登板が、通常の野手登板――野手登板が通常かどうかはさておき――と違っていたのは、通算本塁打の多さだけではない。マウンドに上がった時、カーディナルスは大差をつけられていたのではなく、15対2と大差をつけていた。

 プーホルスは、最初に対戦した4人中2人を討ち取ったが、そこから2人に続けてホームランを打たれ、4点を取られた。けれども、7人目を三塁ゴロに仕留め、試合を終わらせた。

 スタットキャストによると、プーホルスが投げた27球の最速は69.6マイル(約112.0km)。最も遅かったのは、46.6マイル(約75.0km)だ。もっとも、この試合は、プーホルスよりも遅い球を投げた選手がいた。こちらも野手のルイス・ゴンザレス(サンフランシスコ・ジャイアンツ)が、7回裏の途中から登板し、1.1イニングで23球。最速は86.7マイル(約139.km)ながら、半数近い10球は46.0マイル(約74.0km)に届かず、下は42.7マイル(約68.7km)を記録した。

 ゴンザレスはプーホルスに対して投げなかったが、9回表にプーホルスからホームランを打ち、通算本塁打を2本とした。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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