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打ちまくればそれでいい!? この球団は守備に難のある外野手2人と契約。DHは1枠しかないが…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ニック・カステヤノス Sep 27, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 フィラデルフィア・フィリーズは、FA市場に出ていたスラッガーの外野手2人、カイル・シュワーバーニック・カステヤノスを、立て続けに迎え入れた。MLBネットワークのジョン・ヘイマンらによると、シュワーバーの契約は4年7900万ドル、カステヤノスは5年1億ドルだという。年平均額はほぼ同じ。1975万ドルと2000万ドルだ。

 年齢は、29歳と30歳。ほぼ1年違いの、1993年3月5日と1992年3月4日に生まれた。また、彼らは、左打者と右打者だ。その特徴も異なる。シュワーバーは優秀な選球眼のパワー・ヒッターで、カステヤノスは二塁打が多い「ダブル・マシン」だ。もっとも、スラッガーという点は共通する。昨シーズンは、ともに30本以上のホームランを打ち――シュワーバーは2年ぶり3度目、カステヤノスは初――2人ともOPS.925以上とISO.265以上を記録した。

 なお、OPSは「出塁率+長打率」、ISOは「長打率-打率」だ。長打率ではなくISOを用いる理由については、「鈴木誠也もそうなるのか。日本人野手のメジャーリーグ1年目は、ほとんどがパワーダウン。例外だったのは…」のなかで、例を挙げて簡単に説明した。

 もう一つ、この2人には共通点がある。端的に言うと、守備は得意ではない。DH向きの外野手だ。

 今シーズンからは、ナ・リーグもDHを導入するものの、当然ながら、ア・リーグと同じく、その枠は1つしかない。基本的には、シュワーバーがDHとして出場し、カステヤノスはレフトを守ることになるだろう。逆のパターンはあっても、2人が外野に揃うことは、まずなさそうだ。その場合、他の外野手たちは、軒並み、故障者リストに入っているに違いない。

 打順は、昨シーズンの中盤にワシントン・ナショナルズのデーブ・マルティネス監督がそうしたように、ジョー・ジラルディ監督も、シュワーバーを1番に据えるのではないだろうか。続いて、右打者のカステヤノスを挟み、3番は昨シーズンと同じく、左打者のブライス・ハーパーだ。

 昨シーズン、ハーパーが打ったホームランは、シュワーバーとカステヤノスのどちらよりも多く、OPSとISOも高かった。ただ、ハーパーの前を打つテーブルセッター2人は、なかなか固定されなかった。今シーズンは、この3人が、強力な先制パンチを繰り出すというわけだ。

 打撃のプラスが、守備のマイナスを上回る――。そのとおりになるかどうかはさておき、フィリーズは、そう考えているように見える。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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