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110敗のチームが無駄遣い!? 2年1400万ドルでセーブ王と契約も、他の補強は…

宇根夏樹ベースボール・ライター
マーク・マランソン Oct 2, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 アリゾナ・ダイヤモンドバックスは、ロックアウトに入る前に、マーク・マランソンと2年1400万ドルの契約を交わした。

 今シーズン、マランソンは、サンディエゴ・パドレスで39セーブを挙げ、6年ぶり2度目のタイトルを獲得した。セーブ成功率は86.7%、防御率は2.23を記録した。

 一方、ダイヤモンドバックスは、ナ・リーグ最多の110敗を喫した。ア・リーグを含めても、これより多くの黒星を積み重ねたチームはない。ボルティモア・オリオールズも、ダイヤモンドバックスと同じ110敗だ。

 ダイヤモンドバックスのブルペン防御率5.08は、こちらも防御率5.08のワシントン・ナショナルズに次いで高く、リーグ・ワースト2位だった。22セーブはどのチームよりも少なく、セーブ成功率44.0%は最も低かった。

 この点からすると、マランソンを手に入れたことは、理に適う。来シーズンの開幕直前に37歳となるが、マランソンは球威が売りのクローザーではない。92マイル前後のカッターと82マイル前後のカーブを投げ、ゴロを打たせる。ここ3シーズンのゴロ率は、スタットキャストとファングラフス、どちらのデータでも、55%を上回る。

 だが、来シーズン、マランソンのセーブ機会がどれだけあるのかについては、疑問が残る。ダイヤモンドバックスが5年ぶりのポストシーズン進出を狙うのであれば、補強すべきポイントは、ブルペンだけではない。今シーズンの先発防御率は、リーグ・ワースト3位の5.20。打線も似たようなもので、679得点はワースト4位、144本塁打はワースト2位、出塁率.309とOPS.692はワースト3位だ。

 にもかかわらず、マランソン以外の大きな補強は、皆無に近い。今オフに加わった選手のうち、マランソンに次ぐのは、マイナーリーガーと交換にタンパベイ・レイズから得た28歳のユーティリティ、ジョーダン・ループローだろう。今シーズンは61試合で11本塁打ながら、出場90試合以上のシーズンは一度もない。

 アリゾナ・リパブリックのニック・ピエコロらによると、マイク・ヘイゼンGMは、シーズン終了直後の会見で「52勝のシーズンから白星を30増やすのは、おそらく、ちょっとしたチャレンジになる」と語ったという。このコメントは、2022年のポストシーズン進出は可能性が低い、と認めているように聞こえる。52勝+30勝=82勝では、ポストシーズンに進出できるチームが増えない限り、そこにはたどり着けない。一方、大きなチャレンジをするつもりなら、今オフの動きの少なさは納得がいかない。

 来夏のトレード市場でマランソンを売りに出し、交換にプロスペクトを手に入れるつもりなのだろうか。それとも、2022年ではなく2023年のポストシーズン進出に向け、2年契約でマランソンを迎え入れたのか。後者の場合、現在のチームにいる最高の野手、ケテル・マーテイの放出は、今オフのみならず、来夏と来オフもない、ということになる。

 ダイヤモンドバックスがマーテイと交わしている5年2400万ドルの契約は、来シーズンが5年目だが、そこには2023年と2024年の球団オプションがついている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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