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鈴木誠也が「最もフィットする球団」は、レッドソックス!? その理由は…

宇根夏樹ベースボール・ライター
鈴木誠也 JULY 31, 2021(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 ボストン・スポーツ・ジャーナルのショーン・マカダムは、鈴木誠也(広島東洋カープ)を手に入れようとしている球団として、ニューヨーク・ヤンキースとトロント・ブルージェイズとともに、ボストン・レッドソックスを挙げている。

 今オフ、レッドソックスは、ライトを守っていたハンター・レンフローをミルウォーキー・ブルワーズへ放出し、それと交換に、2020年までレッドソックスのセンターだったジャッキー・ブラッドリーJr.(とマイナーリーガー2人)を獲得した。このトレードについては、「OPS.800以上の外野手とOPS.500未満の外野手を交換。両球団それぞれの狙いは…」で書いた。

 2021年の外野は、左から右へ、アレックス・バーデューゴキーケー・ヘルナンデス、レンフローの3人がメインだった。2022年の外野は、現時点のメンバーからすると、ジャレン・デュラン、ブラッドリーJr.、バーデューゴの3人が並び、キーケーは二塁を守ることが多くなりそうだ。2021年の二塁手は、打線におけるウィーク・ポイントだった。

 ただ、デュランは、2021年にデビューしたルーキーだ。AAAの60試合は、16本塁打と16盗塁、出塁率.357を記録したが、メジャーリーグの33試合は、2本塁打と2盗塁、出塁率.241に終わった。来シーズン、レンフローがいなくなった穴を埋めるのは、難しい気がする。

 鈴木の場合も、そのハードルは低くない。レンフローは、それぞれ30本以上のホームランと二塁打を打った。けれども、デュランが左打者であるのに対し、鈴木は右打者だ。レッドソックスの本拠地、フェンウェイ・パークは、レフト側の距離が短く、高さ11m以上の「グリーン・モンスター」が聳え立つ。それを越えるホームランはなかなか打てなくても、そこに当てることで、多くの二塁打を打てるのではないだろうか。「ウォールボール・ダブル」だ。

 今シーズンのレッドソックスには、二塁打30本以上の右打者が4人いた。彼らのうち、ザンダー・ボガーツの二塁打はホームよりアウェーが少し多く、15本と19本ながら、J.D.マルティネスは27本と15本、キーケーは22本と13本、レンフローは21本と12本だった。ボガーツにしても、通算(2013~21年)の二塁打は142本と128本。J.D.に至っては、レッドソックスに入団した2018年以降の4シーズンに、81本と47本だ。

 二塁打を量産できれば、ホームランは20本前後でも、全体の打撃として、今シーズンのレンフローを上回ってもおかしくない。レンフローの出塁率は.315に過ぎなかった。あくまでも机上だが、鈴木をレンフローと比べると――どちらもレッドソックスでプレーするとして――二塁打はイコールかプラス、ホームランはマイナス、出塁率はプラス、トータルはイコールあるいはプラス、と計算することもできる。

 鈴木が加わった場合、外野の並びは、左から右へ、バーデューゴ、ブラッドリーJr.、鈴木がメインになるだろう。こちらの「穴埋め」は問題なさそうだ。今シーズン、レンフローはライトで両リーグ最多の16補殺を記録したものの、ブラッドリーJr.のような名手ではなく、こちらも最多の12失策を犯した。次いで失策の多い2人は、レンフローの半数。ア・リーグに限ると、ライトを守って5失策以上の選手は他にいなかった。

 他球団については、こちらで書いた。

「ヤンキースは鈴木誠也を手に入れようとするのか。外野両翼にはパワー・ヒッターが揃うが…」

「鈴木誠也はマリナーズにフィットするのか。球団3人目の「鈴木」になるのか」

「メッツは鈴木誠也に手を出さない!? FAの外野手2人と立て続けに契約」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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