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ゴールドグラブの捕手を放出した球団が、1歳しか違わないゴールドグラブの捕手を手に入れる。その理由は…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ロベルト・ペレス Jul 18, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ピッツバーグ・パイレーツは、3選手と交換に、捕手のジェイコブ・スータリングススターリングスをマイアミ・マーリンズへ放出した。その翌日、パイレーツは、スターリングスの後釜として、クリーブランド・インディアンズ(現ガーディアンズ)からFAになっていたロベルト・ペレスを迎え入れた。ESPNのジェフ・パッサンとポスト-ガゼッタ・スポーツのジェイソン・マッケイが報じている。1年500万ドルの契約らしい。

 2人の捕手は、どちらもゴールドグラブの受賞者だ。スターリングスは今年、ペレスは2019~20年に選出された。1989年12月22日生まれと1988年12月23日生まれなので、来シーズンは32歳と33歳だ。

 ともにゴールドグラブを受賞していて、年齢は1歳しか違わない。スターリングスがFAになるのは3年後、2024年のオフだ。捕手を代える必要は、ないようにも見える。

 だが、パイレーツは再建中の球団だ。来シーズン、筒香嘉智が活躍しても、ポストシーズンにはたどり着けないだろう。パイレーツがスターリングスを手放したのは、将来のためだ。交換に得た3人中2人、右投手のカイル・ニコラスと外野手のコナー・スコットは、まだメジャーデビューしていない。もう一人の右投手、ザック・トンプソンも、メジャーリーグ1年目を終えたばかりだ。

 2月に23歳となるニコラスは、100マイルの速球を投げる。ドラフト順位は、昨年の2巡目・全体61位。今シーズンはA+とAAで計99.0イニングを投げ、与四球率と防御率はどちらも4.10以上ながら、奪三振率12.36を記録した。22歳のスコットは、2018年のドラフト全体13位だ。今シーズンはA+で96試合に出場し、外野3ポジションを守りながら、打席ではホームラン10本と三塁打6本と二塁打25本を打ち、14盗塁も決めた。この2人と比べると、トンプソンのドラフト順位は2014年の5巡目・全体138位と高くなく、年齢もすでに28歳だが、今シーズンは、14先発で防御率3.25と12救援で防御率3.18を記録した。

 すべてがうまくいけば、数年後、ニコラスはローテーションの一角を占め、スコットはセンターを守っているだろう。トンプソンは、来シーズンからローテーションに加わりそうだ。

 一方、再建中といえども、その間も捕手は必要だ。パイレーツが次代の正捕手と目しているヘンリー・デービスは、今年のドラフト全体1位。メジャーリーグでプレーするのは、2年後か3年後になりそうだ。ペレスはディフェンスに優れるが、ここ2年のシーズンOPSは.480と.564に過ぎず――スターリングスは.702と.704――レギュラーの座を追われた。それによって市場価値が下がったところに、パイレーツが目をつけたというわけだ。もし、FA市場に出るのが2019年のオフなら、年齢は別にしても、24本塁打とOPS.774を記録した直後だけに、いくつもの球団がペレスを欲しがり、パイレーツには手の届かない選手になっていたに違いない。

 なお、来シーズンのパイレーツは、ペレスとペレスの捕手2人となる予定だ。今シーズンのパイレーツで、スタメンマスクがスターリングス(103試合)に次いで多かったのは、マイケル・ペレス(57試合)だった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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