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「サイ・ヤング賞→移籍」の投手は活躍するのか。今年受賞の左腕は5年1億1500万ドルでマリナーズへ

宇根夏樹ベースボール・ライター
ロビー・レイ Sep 15, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 トロント・ブルージェイズからFAになっていたロビー・レイが、シアトル・マリナーズと契約を交わしたようだ。ESPNのジェフ・パッサンやシアトル・タイムズのライアン・ディビッシュらが、5年1億1500万ドルで合意、と報じている。この契約は、3年目が終わった時点でオプト・アウトできる――選手が破棄してFAになれる――という。

 今シーズン、レイは、ア・リーグ最多の193.1イニングを投げ、奪三振率11.54(3位)と与四球率2.42(9位)、防御率2.84(1位)を記録した。23度のクオリティ・スタートも、リーグで最も多かった。サイ・ヤング賞は、ほぼ「満票」で受賞。30人中29人から1位票を得た。

 サイ・ヤング賞投手が、受賞の翌年に違うチームで開幕を迎えるのは、見落としがなければ、レイが9人目となる。ナ・リーグで受賞したコービン・バーンズ(ミルウォーキー・ブルワーズ)が、今オフに移籍することはないはずだ。FAになるのは、2024年のオフ。あと3シーズン、ブルワーズはバーンズを保有できる。

筆者作成
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 彼らのうち、4人目から7人目まで、デビッド・コーンペドロ・マルティネスロジャー・クレメンスR.A.ディッキーの4人は、トレードによって移籍した。レイを含む他の5人は、FAになって新天地へ移った。

 移籍直後のシーズンもサイ・ヤング賞に選ばれたのは、1993年のグレッグ・マダックス――さらに、1995年まで4シーズン続けて受賞――しかいないが、1975年のキャットフィッシュ・ハンターと1998年のペドロは投票2位、1995年のコーンは4位に位置した。ペドロは、移籍2年目の1999年と3年目に2000年に、サイ・ヤング賞を手にしている。

 来シーズンのレイも、彼らに続く可能性は低くない。昨シーズンまでは制球に難があり、なかでも、2018~20年の与四球率は、それぞれ、5.09、4.34、7.84と非常に高かった。その一方で、奪三振率は、2016年から11.20を下回ったことがない。

 また、受賞の翌年にサイ・ヤング賞の投票で0ポイントだった4人は、いずれも、レイとは明らかに異なる点がある。マーク・デービスはリリーフ投手、クレメンスは30代半ば、ディッキーはナックルボーラーだ。トレバー・バウアー(ロサンゼルス・ドジャース)はシーズン途中まで好投していたが、女性に対する暴力容疑が浮上し、7月以降は欠場となった。レイは、10月に30歳の誕生日を迎えたばかりだ。95マイル前後の4シームと80マイル台後半のスライダーが、投球の80~90%を占める。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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