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37歳の投手が3年1億3000万ドルの契約を得る。「年4000万ドル以上」は史上初

宇根夏樹ベースボール・ライター
マックス・シャーザー(左)とウィル・スミス Oct 14, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 来シーズンから、マックス・シャーザーは、ニューヨーク・メッツのユニフォームを着て投げる。ESPNのジェフ・パッサンらが、3年1億3000万ドルで合意に達したと報じている。この契約には、トレード拒否権と、2023年のシーズン終了後にシャーザーがオプト・アウトできる――契約を破棄してFAになれる――権利がついているという。

 年平均額は約4333万ドルだ。これまで、年平均4000万ドル以上の契約を手にした選手はおらず、ゲリット・コール(ニューヨーク・ヤンキース)の年平均3600万ドル(9年3億2400万ドル)が最も高額だった。シャーザーの年平均額は、それを大きく上回る。

 年平均3000万ドル以上の契約は、以下のとおり。シャーザーは、ワシントン・ナショナルズと交わした前回の契約も、年平均3000万ドル以上だった。7年2億1000万ドルなので、年平均はちょうど3000万ドルだ。

筆者作成
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 今シーズン、シャーザーは、ナショナルズとロサンゼルス・ドジャースで計179.1イニングを投げ、ナ・リーグ2位の奪三振率11.84と1位の与四球率1.81、2位の防御率2.46を記録した。この防御率は、自己ベストだ。サイ・ヤング賞を受賞した3シーズン、2013年の2.90、2016年の2.96、2017年の2.51だけでなく、どのシーズンよりも低い。

 ちなみに、2013年以降のシーズン防御率は、短縮シーズンだった2020年の3.74を除くと、いずれも3.15以下。2014年(3.15)と2020年以外は2点台だ。サイ・ヤング賞の投票順位は、1位→5位→5位→1位→1位→2位→3位→得票なし→3位と推移している。また、シャーザーは、メッツが本拠とするシティ・フィールドで通算14試合に登板し、92.2イニングを投げて防御率2.14を記録している。

 4シームの球速などからも、衰えは感じられない。ただ、年齢は37歳だ。今回の契約が終わる時には、40歳になっている。ちなみに、デトロイト・タイガースでシャーザーとともに投げたジャスティン・バーランダー(現ヒューストン・アストロズ)は、37歳と38歳のシーズン(2020~21年)に、年平均3300万ドル(2年6600万ドル)の契約を得ていながら、計1登板しかできなかった。

 メッツが高額の契約でシャーザーを迎え入れたのは、彼に対する評価もさることながら、オーナーの意向が強く働いている気がする。

 1年前にメッツを買収したスティーブ・コーエンは、数年後ではなく、来シーズンの勝利を求めている。正確に言うと、昨オフにクリーブランド・インディアンズからフランシスコ・リンドーアカルロス・カラスコを獲得したことからも窺えるように、今シーズンの勝利を求めていた(そして、逃した)。今オフ、ローテーションに加えようとしていたスティーブン・マッツが、4年4400万ドルでセントルイス・カーディナルスと契約を交わした際、コーエンは、マッツの代理人に対する怒りをツイッターに綴った。もしかすると、この一件が、シャーザーに提示する金額の上乗せにつながった可能性も、ないとは言いきれない。

 今オフにメッツが契約した選手は、シャーザーだけではない。その前に、3人の野手を手に入れている。スターリング・マーテイと4年7800万ドル、マーク・キャナと2年2650万ドル、エデュアルド・エスコバーと2年2000万ドルの契約を交わした。ここから、さらに選手を加えそうな気配も漂っている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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