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鈴木誠也はマリナーズにフィットするのか。球団3人目の「鈴木」になるのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
鈴木誠也 JULY 31, 2021(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 鈴木誠也(広島東洋カープ)が、ポスティング・システムの利用を申請した。

 どの球団と契約するのかは、まだわからない――契約が成立せず、広島東洋カープにとどまる可能性もある――が、CBSスポーツのR.J.アンダーソンのように、候補の一つとしてシアトル・マリナーズを挙げている記者もいる。

 マリナーズには、数多くの日本人選手が在籍してきた。1993年の秋にマック鈴木(鈴木誠)が入団後、日本人選手が不在だった年は皆無だ。イチロー(鈴木一朗)は、選手としてのキャリアを終えてからも、マリナーズに籍を置いている。

 今シーズンのマリナーズで、外野を守った試合が三桁に達した選手は、1人しかいなかった。39本塁打を記録したミッチ・ハニガーだ。けれども、外野手が不足しているわけではない。ジャレッド・ケルニック(2018年のドラフト1巡目・全体6位)、カイル・ルイス(2016年の1巡目・全体11位)、ジェイク・フレイリー(2016年の2巡目・全体77位)、テイラー・トラメル(2016年の1巡目・全体35位)に、ドミニカンのフリオ・ロドリゲスといった具合に、若手がひしめく。いずれも、27歳の鈴木より若い。

 この5人中、今シーズンはA+とAAでプレーしたロドリゲス以外の4人は、すでにメジャーデビューしている。ルイスは、2020年の新人王だ。また、ロドリゲスとケルニックの2人は、今シーズンの開幕前に、ベースボール・アメリカが選ぶプロスペクト・ランキングの全体3位と4位、MLB.comの5位と4位にランクインした。

 来シーズンの外野3ポジションのうち、ライトは、ハニガーで確定している。センターには、ケルニックが入るはずだ。となると、残るはレフトのみ。ルイスは、今シーズンの序盤に右膝を痛めて手術を受け、来シーズンは出遅れそう。ロドリゲスも、新たな労使協定でもFAまでのサービス・タイムが現行のままなら、マイナーリーグで開幕を迎える可能性が高い。それでも、レフトの候補には、フレイリーとトラメルの2人がいる。

 また、2023年以降も、人数は足りている。来シーズンが終わると、ハニガーはFAになるが、3ポジションに5人なら、十分だろう。

 ただ、フレイリーとトラメルだけでなく、ケルニックとルイスも、メジャーリーグで出場100試合以上のシーズンはない。通算出場も、ルイスの112試合が最も多く、他は100試合未満だ。来シーズンのポストシーズン進出をめざすのに、外野の3ポジション中2ポジション、あるいは、控えも含めると4人中3人が実績の乏しい選手という構成は、不安が少なくない。資質を備えていても、そのとおりの結果を残せるとは限らない。

 けれども、この点を解消したいのなら、メジャーリーグでプレーしたことのない鈴木よりも、他の外野手のほうが適任だろう。30歳を超えているFAの外野手を1~2年の契約で加えれば、若手が台頭する機会を阻むことにはならない。

 今オフにマリナーズが補強すべき、優先順位の高い選手は、三塁か二塁を守る内野手と先発投手だ。

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「ヤンキースは鈴木誠也を手に入れようとするのか。外野両翼にはパワー・ヒッターが揃うが…」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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