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シーズンの勝利数は最も多いのに、リーグ優勝を逃した球団。今年の阪神とオリックスもそうなる可能性あり

宇根夏樹ベースボール・ライター
勝利数トップの球団と勝率トップの球団は、必ずしも同じではない(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 レギュラーシーズンの勝利数は、リーグの他球団より多い。にもかかわらず、リーグ優勝を逃す。こうしたことは、過去に何度か起きている。

 勝利数がリーグ優勝の球団と同じだった球団を除いても――単独最多の球団に限っても――セ・リーグは延べ4球団、パ・リーグは延べ10球団を数える。セ・リーグと比べてパ・リーグが多いのは、1973~82年の「前期・後期&プレーオフ」と2004~06年の「勝率上位3球団によるプレーオフ」が理由だ。

筆者作成
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 パ・リーグがレギュラーシーズンを前期と後期に分けていた10年間は、前期優勝と後期優勝が同一球団ならそのままリーグ優勝、異なる場合はプレーオフを行い、先に3勝を挙げた球団をリーグ優勝としていた。例えば、1973年の阪急ブレーブス(前期3位・後期1位)は、前期と後期の計77勝に加え、その勝率.616もリーグで最も高かった。だが、南海ホークス(前期1位・後期3位タイ)と対戦したプレーオフで2勝3敗に終わり、リーグ優勝を逃した。一方、この年に南海が記録した計68勝と勝率.540は、阪急のみならず、ロッテ・オリオンズ(前期2位・後期2位)の計70勝と勝率.588を下回った。

 ちなみに、1982年にセ・リーグ優勝の中日ドラゴンズも、勝利.577は1位ながら、64勝は3位だった。読売ジャイアンツ阪神タイガースが、それぞれ66勝と65勝を挙げ、勝利数では中日を凌いだ。

 2004~06年のパ・リーグは、プレーオフの第1ステージで勝率2位と3位の球団、第2ステージで勝率1位の球団と第1ステージの勝者が対戦し、それを制した球団がリーグ優勝を手にした。福岡ダイエー/福岡ソフトバンク・ホークスは、2003年から2005年まで3年続けてリーグ最多勝&最高勝率ながら、2004年と2005年はリーグ優勝を逃した。

 なお、現行の制度では、両リーグとも、クライマックス・シリーズの結果に関係なく、レギュラーシーズンの勝率が最も高い球団がリーグ優勝となる。

 今年の場合、阪神とオリックス・バファローズが、それぞれのリーグで最も多くの勝ち星を挙げながら、リーグ優勝を逃すことになるかもしれない。10月23日が終わった時点のセ・リーグ勝率1位と2位は、71勝50敗18分(勝率.587)の東京ヤクルト・スワローズと76勝55敗10分(勝率.580)の阪神。パ・リーグは、69勝55敗18分(勝率.556)のオリックスと66勝53敗19分(勝率.555)の千葉ロッテ・マリーンズだ。

 例えば、東京ヤクルトが残り4試合とも引き分け、阪神が2勝0敗だったとすると、それぞれ、71勝50敗22分の勝率.587と78勝55敗10分の勝率.586となる。阪神の78勝は東京ヤクルトより7勝も多いが、勝率.586は東京ヤクルトを下回る。勝利数トップと勝率トップの不一致は、他のパターンでも起きる。パ・リーグでも、オリックスが残る1試合に勝って70勝55敗18分の勝率.560、千葉ロッテが2勝0敗3分で68勝53敗22分の勝率.562、などがそうだ。

 各球団のここからの勝敗と引き分けによる、リーグ優勝の全パターンについては、こちらに記した。

「セ・パ優勝の行方。東京ヤクルトと阪神、オリックスと千葉ロッテ、残り試合の全パターンはこうなる」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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