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観客席で前チームメイトを一緒に応援していた選手とコーチが、来シーズンは一転してライバルに

宇根夏樹ベースボール・ライター
ホアン・ソト(左)とケビン・ロング Jun 30, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ワシントン・ナショナルズの選手と打撃コーチ、ホアン・ソトケビン・ロングは、10月6日にドジャー・スタジアムで行われたワイルカード・ゲームワイルドカード・ゲームに、2人揃って姿を現した。前チームメイトを応援するためだ。今シーズン、ナショナルズは地区最下位に終わった。

 彼らは、ナショナルズで4シーズンをともに過ごしてきた。2019年には、ワールドシリーズ優勝の喜びをともに分かち合った。ドジャースには、夏までナショナルズでプレーしていた、マックス・シャーザートレイ・ターナーがいる。この日、ソトとロングは、それぞれ、ナショナルズ時代のターナーとシャーザーのジャージを着ていた。

 また、今年の夏、オールスター・ゲームのホームラン・ダービーに出場したソトは、ロングに投手を務めてもらった。ソトが最初のラウンドで大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)に勝ったのは、ロングとの二人三脚によるもの、という見方もできる。優勝したのは、次のラウンドでソトを破った、ピート・アロンゾ(ニューヨーク・メッツ)だ。

 だが、ソトとロングが同じチームのユニフォームを着るのは、現時点では、10月6日が最後となる。その1週間後、フィラデルフィア・フィリーズは、ロングの打撃コーチ就任を発表した。レギュラーシーズンが終わった直後に、フィリーズは打撃コーチのジョー・ディロンらを解任した。監督はそのまま、来シーズンもジョー・ジラルディが采配を振る。ジラルディとロングは、ニューヨーク・ヤンキースで監督と打撃コーチだった。また、フィリーズのブライス・ハーパーとロングは、旧知の間柄だ。2018年まで、ハーパーはナショナルズにいた。ちなみに、ロングは、ヤンキースとナショナルズの間にメッツでも打撃コーチを務めたが、当時、アロンゾはメジャーデビューしていなかった。

 ナショナルズとフィリーズは、どちらもナ・リーグ東地区のチームだ。ロングがソトの弱点を把握しているかどうかはわからないが、互いに競い合うチームの一員として、2人は来シーズンを迎える。両チームが最初に対戦するのは4月4日。ナショナルズのホーム・オープナー(ホーム開幕戦)だ。

 なお、ロングの後任となるナショナルズの打撃コーチには、中日ドラゴンズと阪神タイガースでもプレーした、ダーネル・コールズが就任した。「NPB36本塁打の打撃コーチを解任し、後任にNPBの首位打者を据える。次はNPB1本塁打の監督か」で書いたとおり、6月上旬まで、コールズはアリゾナ・ダイヤモンドバックスの打撃コーチだった。ナショナルズでは、傘下のマイナーリーグのチームで、インストラクターや監督、打撃コーチを務めたことがある。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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