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ポストシーズンのホームランを4チームで打った選手のうち、ワールドシリーズ優勝を経験していないのは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
左から、N.クルーズ、C.バスケス、D.ベリーノ Oct 7, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ディビジョン・シリーズ第1戦の3回裏、ネルソン・クルーズ(タンパベイ・レイズ)の打球はキャットウォークの「Cリング」に当たり、ホームランとなった(写真)。これは、レイズが本拠地とする、トロピカーナ・フィールドの特別ルールだ。

 クルーズは、テキサス・レンジャーズとボルティモア・オリオールズ、ミネソタ・ツインズの選手としても、ポストシーズンでホームランを打っている(ミルウォーキー・ブルワーズとシアトル・マリナーズでもプレーしたが、ポストシーズンには出場していない)。イライアス・スポーツ・ビューローによると、4チームでホームランは、ポストシーズン史上6人目。5チーム以上はいないらしい。

 この6人のうち、レジー・サンダースジョン・オルルードは、5チーム中4チームでホームランを記録した。また、ラッセル・マーティンを除く5人はワールドシリーズに出場し、サンダースとオルルード、マイク・ナポリ、クルーズの4人は、そこでホームランを打っている。

筆者作成
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 ただ、サンダースとオルルード、ナポリの3人と違い、クルーズはワールドシリーズ優勝を味わったことがない。2010年は1勝4敗、2011年は3勝4敗。クルーズがワールドシリーズで打った3本のホームランは、どれも白星に結びつかなかった。

 クルーズのいたレンジャーズは、2011年のワールドシリーズでセントルイス・カーディナルスと対戦し、3勝2敗と王手をかけて迎えた第6戦に、優勝まで1アウトに迫った。それも、1度でなく2度だ。

 1度目は、2点リードの9回裏、2死一、二塁から、デビッド・フリーズの三塁打によって同点とされた。2度目は、2点リードの10回裏、1死二、三塁から、三塁ゴロで1点差に詰め寄られ、2死二塁から、アルバート・プーホルス(現ロサンゼルス・ドジャース)を歩かせた後、ランス・バークマンのヒットで再び追いつかれた。そして、11回裏に、フリーズのホームランによって敗れた。

 レンジャーズにとって、悔やまれるのは、9回裏の三塁打だ。この打球は、ライトを守っていたクルーズの差し出したグラブに触れることなく、フェンスのやや下のほうに当たり、勢いよく前方へ跳ね返った。クルーズがもっと深く守っているか、もっとうまく追っていれば、捕れない打球ではなかった。

 あれから、10年が経とうとしている。クルーズが外野を守ったのは、2018年の4試合が最後。現在の年齢は41歳だ。今年が最後のポストシーズンになっても、おかしくない。

 クルーズのポストシーズン通算18本塁打は、歴代6位タイに位置する。29本のマニー・ラミレスを筆頭に、ポストシーズンで18本以上のホームランを打っている9人中、ワールドシリーズ優勝を経験していないのは、クルーズだけだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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