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審判が投げたバットが選手に当たる。幸いにも大事には至らず

宇根夏樹ベースボール・ライター
ホゼ・アブレイユ(左)とヤズマニ・グランダル Jun 9, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月9日、ホゼ・アブレイユ(シカゴ・ホワイトソックス)がバットに当たった。アブレイユのバットにボールが当たったのではない。

 1回裏、1死二塁の場面で、ホワイトソックスの3番打者、ヨアン・モンカーダの打球は三遊間を抜けた。モンカーダはバットから手を離し、一塁へ走り出した。二塁走者のジェイク・ラムは三塁を回ってホームへ向かい、打球を拾ったレフトのルルデス・グリエルJr.(トロント・ブルージェイズ)はホームへ送球した。

 その前後に、ホームで動きがあった。左打席のすぐ横に位置するモンカーダのバットが、ラムの進路の先にあると判断したのだろう、球審のエリック・バッカスはバットを拾い上げ、振り向かずに後ろへ投げた。バッカスは、昨年8月にメジャーデビューしたルーキーの審判だ。

 そのバットが、オンデック・サークルから駆けてきたアブレイユに当たった。こちらは、走ってくるラムに、タッチを避けるため、ホームのどちら側へ滑り込むべきかなど、指示を出せる位置へ移動する途中だったのだろう。アブレイユは小さくジャンプして避けようとしたが、飛んできたバットが左膝にぶつかり、もつれるように転倒した。この直後に、ラムは無事にホームイン。アブレイユはホームに背を向けて倒れていたので、ラムがどうなったかは見えなかったはずだ。

 そのまま、アブレイユはしばらく動けなかった。次打者のヤズマニ・グランダルが駆け寄り、ダグアウトからはトレーナーが出てきた(写真)。

 ただ、幸いにも、大事には至らなかった。アブレイユは打席に入り、追加点は挙げられなかったものの、ライナーを打って三塁手に捕られ、ダグアウトへ戻った。以降も、試合から退くことなくプレーした。

 後から痛みが出てくることもなかったようだ。翌日も「4番・一塁」として出場したアブレイユは、1回裏に二塁打を打って先制点を挙げ、8回裏にも再びタイムリー二塁打を記録した。

 過去2シーズンとも、アブレイユは打点王を獲得している。特に、昨シーズンは60試合で60打点のハイペースだった。今シーズンも、6月10日の2打点により、リーグ・トップに追いついた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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