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リーグ連覇を狙うレイズが、25歳の正遊撃手を放出した理由。シーズンは序盤、チームは快調

宇根夏樹ベースボール・ライター
ウィリー・アダメス May 12, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5月21日、タンパベイ・レイズは、遊撃手のウィリー・アダメスと右投手のトレバー・リチャーズをミルウォーキー・ブルワーズへ放出し、交換に2人の右投手、J.P.ファイアライジンドルー・ラスマッセンを獲得した。

 移籍した投手のうち、リチャーズとラスマッセンはもともと先発投手だが、今シーズンは3人ともブルペンから登板している。年齢は、ラスマッセンが25歳、他の2人は28歳だ。

 アダメスは25歳。2018年の5月下旬にデビューし、その2ヵ月後から今回のトレードまで、正遊撃手としてプレーしてきた。守備がうまく、今シーズンの打撃は不振ながら、2019年は20本のホームランを打ち、2020年はOPS.813を記録した。FAになるのは、2024年のオフだ。

 昨年、レイズはリーグ最多の40勝を挙げ、そこからワールドシリーズまで進んだ。今シーズンは、トレードの時点で26勝19敗(勝率.578)。地区首位のボストン・レッドソックスと1ゲーム差の2位に位置する。シーズン序盤の5月下旬というタイミングのみならず、正遊撃手を手放す理由はないようにも見える。

 ただ、レイズのAAAには「次の遊撃手」が控えている。それも、1人ではない。今シーズン、23歳のビダール・ブルーハンは遊撃を守っておらず、センターと二塁の出場が多いものの、20歳のワンダー・フランコと24歳のテイラー・ウォールズは、遊撃のポジションを分け合っている。

 タンパベイ・タイムズのマーク・トプキンによると、レイズはウォールズを昇格させるらしい。プロスペクトとしての評価はフランコのほうが上だが、守備はウォールズが勝る。また、今シーズンのウォールズは、まだ開幕したばかりとはいえ、打撃も好調だ。AAAの14試合で本塁打と二塁打を2本ずつ打ち、打率.327と出塁率.468記録している。フランコの長打は、同じく14試合で8本(本塁打3本、三塁打1本、二塁打4本)。打率と出塁率は.283と.333だ。

 シアトル・マリナーズが、5月13日にジャレッド・ケルニックローガン・ギルバートをデビューさせたことからもわかるとおり(それについては「マリナーズの新時代が始まる。投打のプロスペクトが同じ試合でデビュー。ともに3年前のドラフト1巡目」で書いた)、サービス・タイムの調整に必要な日数はすでに経ている。球団は、開幕当初にデビューさせず、その数週間後とすることで、選手がFAになるのを1年遅らせる。

 フランコではなくウォールズだったのは、年齢の差だろうか。将来的にどちらが遊撃を定位置とすることになるのかは、まだわからない。フランコの評価は、レイズのプロスペクトにとどまらない。ベースボール・アメリカとベースボール・プロスペクタス、MLBパイプラインのいずれも、開幕前のプロスペクト・ランキングでフランコを全体1位としている。

 一方、ブルワーズでは、23歳のルイス・ウリーアスが、遊撃でエラーを連発している。

 なお、この6日前に、レイズはこんなトレードも成立させた。

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ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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