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今春の「球団新人王」に選ばれても、笑顔はなし!? 過去には松井秀喜や田中将大も受賞

宇根夏樹ベースボール・ライター
デイビー・ガルシア(ニューヨーク・ヤンキース)Mar 9, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 デイビー・ガルシア(ニューヨーク・ヤンキース)が、ジェームズ・P・ドーソン賞を受賞した。ニューヨーク・タイムズの記者の名を冠したこの賞は、ヤンキースのスプリング・トレーニングで最も優れていた新人に与えられる。60年以上の歴史を持ち、これまでの受賞者には、現マイアミ・マーリンズ監督のドン・マッティングリー(1983年)や元・広島東洋カープのアルフォンソ・ソリアーノ(2001年)らがいる他、松井秀喜(2003年)と井川慶(2007年)、現・東北楽天ゴールデンイーグルスの田中将大(2014年)も選ばれている。

 ガルシアは昨年8月にメジャーデビューし、ポストシーズンでも先発したが、今シーズンも新人王資格を持っている。

 受賞の記念品として、ガルシアはアーロン・ブーン監督からオリスの腕時計を手渡された。ただ、こちらの勝手な思い込みかもしれないが、その表情は強ばっているようにも見える。

 開幕ローテーションを担う候補の一人として、ガルシアはスプリング・トレーニングに参加していた。だが、受賞の数日前にマイナーリーグ行きを告げられた。

 ヤンキースのローテーションを形成するのは、ゲリット・コールコリー・クルーバージェイムソン・タイオンジョーダン・モンゴメリードミンゴ・ハーマンの5人だ。開幕当初はスケジュールが詰まっていないため、コール、クルーバー、ハーマン、モンゴメリー、再びコール、タイオンの順に登板すると思われる。

 今春、ガルシアは5試合に先発し、計14.0イニングで与四球8ながら14三振を奪い、防御率3.86を記録した。一方、ガルシアの「ライバル」だったハーマンは、4先発の計13.0イニングで与四球1、奪三振17、防御率1.38。それだけで決まるわけではないとはいえ、ガルシアを凌ぐ結果を残した。ガルシアの成績は、球団新人王にはふさわしくとも、ローテーションの一角を得るには(相対的に)十分ではなかったということだろう。

 もっとも、シーズンは長い。ガルシアが昇格し、先発マウンドに立つチャンスは、必ず巡ってくるはずだ。ローテーションを形成する5人のうち、クルーバーは過去2年とも故障で満足に投げることができていない上、4月10日には35歳の誕生日を迎える。また、昨シーズン、ハーマンは全休した。その経緯については、先月、「ヤンキースに不協和音!? セットアッパーがチームメイトを批判」で書いたとおりだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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