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エース3人を獲得したパドレスに対し、王者ドジャースは一点豪華主義!? 新・地区ライバルの補強と因縁

宇根夏樹ベースボール・ライター
トレバー・バウアー(ロサンゼルス・ドジャース)Mar 1, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 これまで、ロサンゼルス・ドジャースのライバルは、サンフランシスコ・ジャイアンツだった。その関係は、両球団がニューヨークに本拠を構えていた時代まで遡る。どちらも、1958年に東海岸から西海岸へ移転した。

 2013年から、ドジャースは地区優勝を8年続けている。2017~18年と2020年はリーグ優勝も果たし、昨年はワールドチャンピオンになった。一方、ジャイアンツは2010年以降に3度、2010年、2012年、2014年のワールドシリーズで優勝した。ちなみに、ナ・リーグ西地区の他3球団のうち、アリゾナ・ダイヤモンドバックスは2001年にワールドシリーズを制したが、サンディエゴ・パドレスとコロラド・ロッキーズの2球団は、近年に限らず、一度もワールドシリーズで優勝したことがない。1993年創設のロッキーズは、地区優勝も皆無だ。

 だが、ここからは、ドジャースとパドレスが、新たなライバルとなりそうな気配が漂う。今オフ、パドレスは大補強を繰り広げた。その動きは、昨年から今年にかけて3本の記事、「ダルビッシュとスネル、キムを手に入れたパドレスの野望は、来年のワールドシリーズ優勝にとどまらない」「スネルとダルビッシュに続き、パドレスが三角トレードで3人目のエースを獲得」「ダルビッシュらを手に入れた「プレラーGMの大補強」は、大失敗に終わった6年前の二の舞にならないのか」で書いてきた。2月にドジャースと再契約を交わしたジャスティン・ターナーは、会見でパドレスとの対戦について「今年は19試合のワールドシリーズがあるようなもの」と語った。同地区の球団は、レギュラーシーズンに19試合で対戦する。

 一方、ドジャースの動きは、パドレスとは対照的だ。ニューヨーク・メッツとの争奪戦を制し、今オフ最高のFAだったトレバー・バウアーを手に入れた。それ以外は、リリーフ投手を2人加えた程度だ。この2人のうち、トミー・ケインリーは昨夏にトミー・ジョン手術を受けたので、今シーズンはまず登板できない(ドジャースはケインリーと2年契約を交わした)。

筆者作成
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 もっとも、ドジャースのローテーションには、バウアーだけでなく、デビッド・プライスも加わる。プライスのドジャース入団は、昨年の2月だ。ムーキー・ベッツとともに、ボストン・レッドソックスから移ってきたが、昨シーズンは新型コロナウイルス感染のリスクを鑑み、全休を選択した。今シーズンはプレーする予定だ。それでなくとも、ドジャースには先発投手が揃っている。バウアー、クレイトン・カーショウウォーカー・ビューラーフリオ・ウリーアス、プライスの5人に、ダスティン・メイトニー・ゴンソリンもいる。プライスがはみ出ることも、あり得る。

 また、ドジャースからFAとなったレギュラークラスの野手3人中、ジョク・ピーダーソンキーケー・ヘルナンデスは、それぞれ、シカゴ・カブスとレッドソックスへ移ったが、ターナーは戻ってきた。もともと、ドジャースは投打とも選手層が厚い上、キーケーの他にも複数のポジションをこなせる野手が少なくない。しかも、昨シーズンのピーダーソンとキーケーは、どちらもOPS.690未満の不振に終わった。こうしたことからすると、彼らの退団はそう大きなマイナスではない(昨シーズンの短さ、サンプル数の少なさを考えれば、今シーズン、2人が活躍しても不思議ではない)。

 新たなライバル関係に興を添える選手も、パドレスにはいる。昨年のワールドシリーズで、ドジャースはタンパベイ・レイズと対戦した。レイズのエースだったブレイク・スネルは、今オフにパドレスへ移った。スネル自身はドジャースに打ち込まれていない。第2戦の5回途中に降板した時、レイズは5対2とリードしていた。第6戦の6回途中にマウンドを降りた時のスコアは、1対0だった。第2戦はレイズが逃げきったが、第6戦はスネルの降板直後にドジャースが逆転し、そのままリードを保って優勝を決めた。この投手交代は論議の的となり、スネルも疑問符をつけた。パドレスへトレードされた後、ポッドキャストの番組に出演したスネルは「ワールドシリーズ(の優勝)を彼らに手渡してしまったような気がする」と語った。

 スネルに続いてパドレスに加わったダルビッシュ有は、昨シーズン、バウアーにサイ・ヤング賞を阻まれた格好だ。予想外の大差がついたとはいえ、ナ・リーグの投票結果は、バウアーが1位、ダルビッシュは2位だった。ダルビッシュにとって、ドジャースはかつて在籍した球団でもある。ドジャースは2017年の夏にテキサス・レンジャーズからダルビッシュを獲得し、ワールドシリーズまで進んだが、当時、バッテリーのサインを盗んでいたヒューストン・アストロズに敗れた。

 さらに言えば、パドレスのオーナー、ピーター・サイドラーは、ドジャースのオーナーとして球団をロサンゼルスへ移転させたウォルター・オマリーの孫であり、その後を継いだピーター・オマリーの甥だ。サイドラーからすると、オマリー親子は祖父と叔父(母の弟)となる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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