Yahoo!ニュース

本塁打が「前年プラス10本以上」の打者と「マイナス10本以上」の打者。大山悠輔は倍増、吉田正尚は半減

宇根夏樹ベースボール・ライター
レオネス・マーティン Apr 14, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨シーズン、前年(2019年)からホームランが10本以上増えた打者は8人、10本以上減った打者は21人いた。一軍出場が、2019年と2020年のどちらか一方しかない選手は含めていない。

筆者作成
筆者作成

 最も増えたのは、プラス22本の柳田悠岐(福岡ソフトバンクホークス)だ。もっとも、これは驚きではない。2019年の少なさは、故障による長期欠場が理由。2020年の14.7打数/本は、2年続けて30本以上を記録した2017~18年のトータル、13.8打数/本とあまり変わらない。

 プラス15本のT-岡田(オリックス・バファローズ)とプラス14本の梶谷隆幸(現・読売ジャイアンツ)も、2019年とその前後は、柳田と似ている。梶谷の場合、2019年だけでなく、その前年(2018年)のホームランも少なかった。この2シーズンとも、出場は41試合だ。直近5シーズン(2016~20年)の本数は、18本→21本→8本→5本→19本と推移している。

 プラス16本の栗原陵矢(福岡ソフトバンク)とプラス15本の佐野恵太(横浜DeNAベイスターズ)は、2人とも一軍4年目にブレイクした。それまでの3シーズン(2017~19年)のホームランは、栗原が46試合の51打数で1本、佐野は180試合の347打数で10本だった。

 プラス14本の大山悠輔(阪神タイガース)は、前年プラス10本以上の8人のなかでは唯一人、前年よりも少ない打数でホームランを増やした。昨シーズンが一軍4年目だったのは、栗原と佐野と同じ。だが、大山は2019年も規定打席に到達している。ホームランを打つペースはともかく、大山のシーズン本塁打は、3年続けて前年プラス3本以上だ(7本→11本→14本→28本)。今シーズンもそうなら、31本以上となる。過去10シーズン、阪神にシーズン30本塁打以上の打者は現れていない。2010年のクレイグ・ブラゼル(47本)が最後だ。ちなみに、本塁打王は、1985~86年に2年続けて三冠王のランディ・バース(54本/47本)を最後に途絶えている。

 プラス14本の堂林翔太(広島東洋カープ)は、一軍デビューの2012年に144試合の488打数で14本のホームランを打った後、2013~19年の7シーズンは計413試合の904打数で17本に終わった。2012年と同じ14本の昨シーズンは、「再ブレイク」といったところだ。ただし、6~8月の12本に対し、9~11月は2本。他のスタッツも同様なので、昨シーズンの打撃が本物なのかどうか、今シーズンは真価が問われる。

 プラス11本のレオネス・マーティン(千葉ロッテマリーンズ)は、過去2シーズンとも、ホームランを打つペースは同水準だ。また、2019年の本数は、6月半ばまでにメジャーリーグのクリーブランド・インディアンズで記録した9本を合わせると、計23本となる。こちらも、2020年とほとんど同じだ。

 一方、マイナス10本以上の21人のなかには、首位打者の吉田正尚(オリックス)がいる。打数は前年から100以上減ったが、ホームランの減少幅はそれを上回り、マイナス15本(29本→14本)。2019年の半数に届かなかった。2019年と2020年を比べると、打率(.322→.350)と出塁率(.413→.453)に加え、OPS(.956→.966)とBB/K(1.23→2.48)も上がったが、長打率(.543→.512)とISO(.221→.162)は下がっている(OPS=出塁率+長打率、BB/K=四球÷三振、ISO=長打率-打率)。特に、ISOはキャリア・ワースト。規定打席未満のシーズンを含め、初めて.200を下回った。対戦する相手からすると、2020年版の吉田よりも、パワーのある2019年版の吉田の方が脅威ではないだろうか。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事