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スプリング・トレーニングで好調だった選手は、レギュラーシーズンでも好成績を残したのか。昨年の場合…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ニック・テノルー(ヒューストン・アストロズ)Feb 18, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨春、ノーラン・アレナード(コロラド・ロッキーズ)はエキシビション・ゲームの20試合で、打率.389(54打数21安打)、5本塁打、OPS1.209を記録した。それぞれの順位は、9位、4位タイ、5位だ(打率とOPSは50打席以上の235人中)。そして、レギュラーシーズンでは155試合に出場し、打率.315(588打数185安打)、41本塁打、OPS.962。こちらは、8位、7位タイ、9位に位置した(打率とOPSは500打席以上の137人中)。本塁打は2015年の42本より1本少ないだけで、打率とOPSはキャリアハイを更新した。

 けれども、好調なスプリング・トレーニングを過ごしたにもかかわらず、レギュラーシーズンでは振るわなかった選手も少なくなかった。例えば、ミゲル・カブレラ(デトロイト・タイガース)とブランドン・ベルト(サンフランシスコ・ジャイアンツ)のOPSは、スプリング・トレーニングが1.120以上、レギュラーシーズンは.750未満だ。

筆者作成
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 一方、スプリング・トレーニングでは低迷したものの、レギュラーシーズンでよく打った選手もいた。ジョシュ・ベル(ピッツバーグ・パイレーツ)は、エキシビション・ゲームの19試合で2本塁打しか打てず、打率.196(56打数11安打)とOPS.563に終わった。それが、レギュラーシーズンでは、143試合で本塁打と二塁打を37本ずつ打ち、打率.277(527打数146安打)とOPS.936。見事にブレイクした。ちなみに、その前の2シーズンの本塁打は、計307試合で38本だった。

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 スプリング・トレーニングとレギュラーシーズンの成績は、直結していないだけでなく、相反することも多い。

 とはいえ、レギュラーの座を争っていたり、ロースター入りが確定していない選手にとって、スプリング・トレーニングの成績は重要だ。昨シーズン、ライアン・ミックマン(ロッキーズ)は二塁のポジションをほぼ手中に収めたが、エキシビション・ゲームで打ちまくらなければ、そのチャンスを得ることはできなかったかもしれない。2018年は91試合で5本塁打、打率.232(181打数42安打)とOPS.683。ポジション別の先発出場は、一塁の21試合が最も多く、二塁と三塁は8試合ずつに過ぎなかった。

 ちなみに、スプリング・トレーニングでミックマンに次ぐOPS1.215を記録したニック・テノルー(ヒューストン・アストロズ)は、開幕後もよく打ち、AAAの127試合で19本塁打と39二塁打、打率.295(454打数134安打)とOPS.880を記録したが、メジャーデビューはできなかった。これは、ポジションが最大の要因だろう。テノルーは遊撃以外の内野3ポジションを守るが、アストロズの内野は――内野に限った話ではないが――層が厚い。一塁にユリ・グリエル、二塁にホゼ・アルトゥーベ、三塁にアレックス・ブレグマン、遊撃にはカルロス・コレイアがいて、アレドミーズ・ディアスは内野4ポジションを守る。

 一昨年と昨年に続き、テルノーは今年もノン・ロースター・インバイティ(キャンプ招待選手)として、アストロズのスプリング・トレーニングに参加している。内野陣の顔ぶれは前年と変わらず、テルノーはロースター26人目の候補の一人。昨年と違い、ここまでの10打席で打ったヒットは、二塁打が1本だけだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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