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ワールドシリーズ優勝10周年の式典に、チーム最高の打者は呼ばれない。他球団にいるわけではないのに…

宇根夏樹ベースボール・ライター
エドガー・レンテリア(左)とオーブリー・ハフ November 1, 2010(写真:ロイター/アフロ)

 サンフランシスコ・ジャイアンツは、2010年のワールドシリーズ優勝を記念し、この夏にイベントを催す。8月15日は、10周年記念のTシャツを先着2万名に配布。翌日は、優勝リングのレプリカを先着3万名に配るだけでなく、当時のメンバーが集合し、試合前にセレモニーを行う。2012年と2014年もワールドシリーズを制しているが、ジャイアンツにとって、2010年の優勝は特別だ。1958年にニューヨークからサンフランシスコへ移転後、初めてワールドチャンピオンとなった。

 けれども、当時の選手のうち、オーブリー・ハフはセレモニーに呼ばれない。ジ・アスレティックのスティーブ・バーマンとダン・ブラウンによると、球団がそう決めたという。

 2010年のジャイアンツにおいて、ハフは最高の打者だった。26本塁打と86打点はチームで最も多く、出塁率.385、OPS.891、wOBA.387、wRC+144も1位だ(10打席以上)。ポストシーズンでは、15試合で8打点を挙げた。そこには、ディビジョン・シリーズ第3戦の9回表2死から打った同点タイムリー・ヒットや、ワールドシリーズ第4戦の先制2ラン本塁打なども含んでいる。また、8月下旬からハフが着用し始めた「妻の赤いTバックの下着」は、ジャイアンツのラッキー・アイテムとなった。

 ハフはすでに選手生活を終えていて、監督やコーチとして他球団のユニフォームを着ているわけでもない。にもかかわらず、セレモニーに招かれないのには、理由がある。

 昨年11月には「2020年にバーニー・サンダースがドナルド・トランプを破る番狂わせがあれば、息子たちに銃の使い方を教える」とツイート。今年1月には「イランに攻め入って女性を10人ずつ誘拐してこよう」と綴った(後に削除し、ジョークだと釈明)。

 さらに、アリッサ・ナッケンがジャイアンツのコーチに就任すると――女性がフルタイムのコーチとなるのはメジャーリーグ初――彼女を応援するのではなく、「元女性ソフトボール選手から指導を受けるなんて想像できない。ブランドン・クロフォードブランドン・ベルトバスター・ポージーよ、楽しんでくれ」とツイートした。

 なお、このセレモニーには、2010年のポストシーズンで投げた、マディソン・バムガーナーセルジオ・ロモも出席しない。2人はそれぞれ、アリゾナ・ダイヤモンドバックスとミネソタ・ツインズにいる。8月16日にジャイアンツが対戦するのは、コロラド・ロッキーズだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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