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2019年のMLBで「最も平均的な打者」は、総額1億ドルの契約を手にしている

宇根夏樹ベースボール・ライター
エバン・ロンゴリア(サンフランシスコ・ジャイアンツ)Aug 17, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今シーズン、メジャーリーグ全体のスラッシュライン(打率/出塁率/長打率)は、.252/.323/.435だった。3部門とも、昨シーズンの.248/.318/.409からアップしている。ちなみに、スラッシュラインという呼び方は、スラッシュで区切って表記することから来ている。

 昨シーズンの平均スラッシュラインに最も近かったのは、マーウィン・ゴンザレスだ。マーウィンはヒューストン・アストロズで、.247/.324/.409を記録した。平均と比べると、打率はマイナス1ポイント、出塁率はプラス6ポイント、長打率は同じ。これについては、2月に「昨シーズンの「最も平均的な打者」は、平凡とは程遠い選手だった」で書いた。

 ミネソタ・ツインズへ移った今シーズンも、マーウィンのスラッシュラインは、平均とそうかけ離れてはいなかった。打率.264は平均の12ポイント上、出塁率.322は1ポイント下、長打率.414は21ポイント下だった。

 ただ、今シーズンの「最も平均的な打者」はマーウィンではない。エバン・ロンゴリア(サンフランシスコ・ジャイアンツ)だ。スラッシュラインの.254/.325/.437は、どれも平均より2ポイント高いだけ。プラスかマイナスを問わず、3部門のいずれも平均と10ポイント差以内の選手は、ロンゴリア以外にいない。

 数年前まで、ロンゴリアはタンパベイ・レイズの顔としてプレーしていた。2008年のメジャーデビューから2012年まで、OPSは5年続けて.850以上。デビュー直後に6年1750万ドルで契約を延長し、2012年のシーズン終了後には、2017年から始まる6年1億ドルの延長契約を交わした。2017年のオフにトレードでジャイアンツへ移ったが、この契約は2022年まで続く。今シーズンのような、平均とほとんど同じスラッシュラインでは、契約に見合う働きとは言い難い。

 とはいえ、ジャイアンツ1年目の昨シーズンに記録した.244/.281/.413と比べれば、今シーズンのロンゴリアは持ち直した。三塁の守備も同様だ。また、後半戦に限れば、スラッシュラインは.277/.341/.435だった。現在の年齢は34歳、契約の残りは3年。レイズで活躍した当時の姿に戻れるかどうかはわからないが、1億ドルの契約に対し、その間の成績がマイナスであると「収支決算」を出すのは、まだ早い。

 なお、ロンゴリアは300本塁打と400二塁打まで、それぞれあと3本と18本に迫っている。

「最も平均的な打者」の日本プロ野球編はこちら。

2019年の「最も平均的な打者」は誰? NPBの平均スラッシュラインに近かったのは…

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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