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今オフのFAビッグ3が、ワールドシリーズに揃い踏み

宇根夏樹ベースボール・ライター
アンソニー・レンドーン(左)とスティーブン・ストラスバーグ Jul18,2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨オフのFAビッグ3は、ブライス・ハーパーマニー・マチャドパトリック・コービンだった。彼らはそれぞれ、フィラデルフィア・フィリーズと13年3億3000万ドル、サンディエゴ・パドレスと10年3億ドル、ワシントン・ナショナルズと6年1億4000万ドルの契約を交わした。

 3人のうち、マチャドは、昨年のワールドシリーズにロサンゼルス・ドジャースの選手として出場した。コービンは、今年のワールドシリーズでマウンドに上がる。

 一方、今オフのFA市場でビッグ3になりそうな3人は、これから始まるワールドシリーズに揃って出場する。ヒューストン・アストロズのゲリット・コールとナショナルズの2人、アンソニー・レンドーンスティーブン・ストラスバーグがそうだ。コールは第1戦、ストラスバーグは第2戦の先発マウンドに立つ。3人とも、代理人がスコット・ボラスであることも共通する。昨オフのビッグ3のなかに、ボラスの顧客はハーパーしかいなかった。かつてはマチャドもボラスを代理人としていたが、2011年2月にダン・ロザノ(MVPスポーツ・グループ)へ変更した。

 なお、ビッグ3になりそう、と曖昧に書いたのは、以下の理由による。ストラスバーグがFAになるのは、現在の契約をオプト・アウトした(自ら打ち切った)場合だ。7年1億7500万ドルの契約は、あと4年1億ドルが残っている。ストラスバーグは、今オフにオプト・アウトしなくても、来オフもこの権利を行使できる。

 ただ、来オフにオプト・アウトするというシナリオは考えにくい。実力は折り紙付きながら、ストラスバーグは故障が少なくない。再び故障に見舞われる可能性を考えると、5年ぶりに200イニング以上を投げた直後の今オフこそ、FA市場に打って出るチャンスだ。現在は31歳の年齢も、来オフは32歳となる。今オフにFAとなるか、あるいはその前に、オプト・アウトできる権利を梃子として、ナショナルズから4年1億ドルを超える新契約を引き出そうとするのではないか。昨オフのクレイトン・カーショウ(ドジャース)と同じパターンだ。7年2億1500万ドルのうち、2年6500万ドルが残っていたカーショウは、3年9300万ドルの延長契約を手にした。

 また、ワシントン・ポストによると、ナショナルズはレンドーンに7年2億1000万~2億1500万ドルの契約を申し出ているという。どうやら、FAとなっても有効な提示のようだ。同じ三塁手のノーラン・アレナード(コロラド・ロッキーズ)は、昨オフに8年2億6000万ドルの延長契約を交わした。そうしていなければ、レンドーンらとともに、今オフのFAビッグ4を形成していたに違いない。今シーズンのアレナードは28歳、来シーズンのレンドーンは30歳。アレナードの契約は年平均3250万ドル、レンドーンが提示されている契約は年平均3000~3071万ドルだ。となると、レンドーンに対する他球団の申し出は、ナショナルズの提示額を上回るにしても、それほど大きな積み上げはなく、アレナードの契約には届かないだろう。

 コールに関しては、総額2億ドルを突破してもおかしくない。3年続けて200イニング以上を投げ、ここ2年はいずれも奪三振率12.00以上&防御率2点台だ。しかも、ストラスバーグよりも2歳若い。

 もちろん、現在の在籍球団は、彼らに1年1780万ドルのクオリファイング・オファーを申し出るはずだが、3人ともそれを受け入れることはあり得ない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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