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出場停止8人の大乱闘が起きるまでには、数々の「遺恨」が存在した

宇根夏樹ベースボール・ライター
パイレーツとレッズの乱闘 Jul 30, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月30日の乱闘により、ピッツバーグ・パイレーツとシンシナティ・レッズの計8人が出場停止処分を受けた。両チームとも、監督と選手3人。そこには、乱闘の当日、レッズからクリーブランド・インディアンズへ移籍したヤシエル・プイーグも含まれている。さらに、数人が罰金を科された。

 この試合では、まず、7回裏にキオーネ・ケラ(パイレーツ)がデレク・ディートリック(レッズ)の頭近くに投げた。その後、9回表にジャレッド・ヒューズ(レッズ)がスターリング・マーテイ(パイレーツ)の腰にぶつけ、ヒューズと交代したアミーア・ギャレットは(失点と)野次に激昂。マウンドからパイレーツのダグアウトへ突進し、乱闘の幕を開けた。

 ただ、今シーズンに限っても――両チームはナ・リーグ中地区に所属する――そもそもの発端は、4月7日まで遡る。2回表にクリス・アーチャー(パイレーツ)からホームランを打ったディートリックは、すぐに走り出さず、打球の行方を眺めていた。この振る舞いに対し、アーチャーは4回表にディートリックの尻に向かって投げた。球審がアーチャーに警告を与えたのに対し、デビッド・ベル監督(レッズ)は退場にすべきだと抗議。そこから、乱闘に発展した。最も大暴れしたのは、プイーグだ。この時は、アーチャーとプイーグ、ベル監督の3人が、出場停止を科された。

 そこから2ヵ月近く経ち、両チームは5月27日に再び顔を合わせた。この日はダブルヘッダーのいずれも、乱闘にならずに済んだ。ディートリックは第2試合の5回裏に死球を受けたが、文句をつけることはなかった。ただ、次の打席でホームランを打つと、ゆっくりとダイヤモンドを一周。火種が完全に消えることはなかった。2日後の5月29日には、左肘に当てられたエウヘニオ・スアレス(レッズ)がマウンドへ歩いていき、ぶつけたクレイ・ホームズ(パイレーツ)と言葉を交わす場面もあった。

 3月28日と31日の開幕シリーズを除くと、その後の3シリーズ――4月4日~7日、5月27日~29日、7月29日~31日――では、いずれも何かが起きている。パイレーツとレッズは、あと2シリーズで顔を合わせる。8月23日~25日と9月27日~29日だ。プイーグはレッズを去ったが、入れ替わりにトレバー・バウアーが加わった。お騒がせという点では、バウアーもプイーグに負けていない。しかも、バウアーの与死球は、両リーグ最多の15を数える。

 3度目の乱闘が起きても、不思議ではない。そうなったとしても、怪我人が出ないことを祈りたい。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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