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一本化されたトレード・デッドラインに「抜け道」はないのか。8月に入っても補強は可能!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ケンドリース・モラレス Jun 1, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月31日の午後4時(アメリカ東部時間)に設定されていたトレード・デッドラインは、すでに過ぎた。昨シーズンまでは、その後もウェーバーを経たトレードができ、8月31日に「第2のトレード・デッドライン」が存在した(9月に入ってからもトレードは可能だったが、ポストシーズンの出場資格を持つのは8月末の時点でその球団に在籍している選手)。けれども、今シーズンから8月以降のトレードはできなくなり、デッドラインは一本化された。

 USAトゥディのボブ・ナイテンゲールが、デッドライン前に発したツイートによると、GMたちは、トレード・デッドラインを8月15日にずらし、買い手と売り手のどちらに回るかを決める時間をもっとほしいと考えていて、11月のGM会議で話し合うという。ということは、どうやら、8月以降にトレードで選手を獲得する「抜け道」はないか、あってもGMは見つけることができていないようだ。

 ただ、選手を手に入れる方法は、トレードに限らない。

 まず、FAと契約するという手がある。例えば、ケンドリース・モラレスは、7月初旬にニューヨーク・ヤンキースから解雇された後、どの球団にも所属していない。2015~18年は4年続けて20本以上のホームランを打ち、シーズン平均25.3本を記録した。今シーズンは、オークランド・アスレティックスとヤンキースの計53試合で12本だ。5月半ばの移籍は、アスレティックスから解雇されたのではなく、トレードでヤンキースへ移った。このこともからも、故障者の一時的な穴埋めとはいえ、ヤンキースはそれなりに期待していたことが窺える。今シーズン、メジャーリーグでプレーした野手に限っても、モラレスの他に、マット・ケンプマーク・レイノルズ、ともに「カーゴ」のニックネームを持つカルロス・ゴメスカルロス・ゴンザレスらが、FAになっている。ハンリー・ラミレスもそうだが、7月に右肩の手術を受け、来シーズンの復帰をめざすようだ。

 また、40人ロースターから外され、ウェーバーにかかった選手を獲得することもできる。ウェーバーを経由したトレードはできないが、ウェーバー公示中の選手に対し、獲得の名乗りを上げ、手に入れることは可能だ。ダラス・モーニング・ニューズのエバン・グラントによると、テキサス・レンジャーズは8月2日に、アズドゥルバル・カブレラティム・フェデロビッチを40人ロースターから外すという。フェデロビッチは控え捕手だが、カブレラはオールスター・ゲームに2度選ばれた内野手だ。今シーズンは打率.235&12本塁打。レギュラーとして三塁を守っていた。もっとも、ウェーバーにかかっている選手を獲得した場合、以前の契約をそのまま引き継ぐ必要がある。カブレラなら、年俸350万ドルの残り分だ。他球団が手を出さないようなら、FAになるまで待って契約した方が安く済む。

 さらにもう一つ。実は、トレードもまったく不可能ではない。新たなルールの下でも、40人ロースターに入っていない選手は、8月以降もトレードできる。シカゴ・ホワイトソックス傘下のAAAにいるアルシデス・エスコバーは、40人ロースターに名を連ねていない。2010~17年にカンザスシティ・ロイヤルズで正遊撃手を務め、2015年のワールドシリーズ第1戦に先頭打者ランニング本塁打を打った、あのエスコバーだ。32歳のベテランだけに、ホワイトソックスとしても、何らかの見返り――それが微々たるものであっても――が得られるトレードを断ることはないだろう。ホワイトソックスで40人ロースターに入っていない選手には、パウロ・オルランド(2016年に484打席で打率.302の外野手)、ブランドン・ガイヤー(2015~16年に2年連続ア・リーグ最多死球の外野手)、オドリサマー・デスパイネ(メジャーリーグ通算109登板の右投手)もいる。

 いずれも、主力としての働きを求めるのは無理がありそうだ。けれども、ヤンキースがモラレスを獲得した時と同じように、故障者の一時的な代役であれば、彼らにも務まるのではないだろうか。もしかすると、こういった選手が意外な活躍をして、ヒーローになる試合が、これからあるかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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