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両リーグ最高の勝率でも、ワールドシリーズ優勝には疑問符。トレードであそこを補強するべきだったのでは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ケンリー・ジャンセン/昨年のワールドシリーズ第4戦 Oct 27, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 30球団のなかで、8月を迎える前に70勝に達したのは、ロサンゼルス・ドジャースだけだ。勝ち星が多いだけでなく、7月末時点の得失点差+165もトップ。他には、得失点差+130以上の球団すらない。

 けれども、ドジャースがワールドシリーズ優勝に最も近いとは言いきれない。明らかな懸念材料があるにもかかわらず、トレードでそれを解消することができなかった。

 一昨年のワールドシリーズで、ケンリー・ジャンセンはセーブ失敗1度を含め、6登板中3試合で得点を許した。昨年のワールドシリーズでは、セーブに2度失敗。第3戦も第4戦も8回表に登板し、ソロ本塁打を打たれて同点に追いつかれた(写真は第4戦)。どちらも2イニング目に入ってからではなく、1イニング目のことだった。

 また、今シーズンの防御率は3.59、セーブ成功率は86.2%だ。極端に悪くはないが、これまでのジャンセンと比べると見劣りする。スタットキャストのデータによると、カッターの球速が少し落ち、過去4シーズンとも.200未満だった被打率は.244まで上昇している。ジャンセンの投球は、4分の3以上をカッターが占める。年齢は31歳。全盛期は過ぎ去ろうとしているのかもしれない。

 ドジャースも手をこまねいていたわけではなく、ピッツバーグ・パイレーツのクローザー、フェリペ・バスケスに目をつけ、交渉をしていたらしい。MLB.comのケン・ガーニックによると、交換要員として、球団トップ・プロスペクト4人のうち2人をパイレーツに要求され、ドジャースはそれを断ったという。

 ただ、トレード市場で名前が取り沙汰されていたクローザーは、バスケスだけではない。デトロイト・タイガースにいたシェーン・グリーンは、アトランタ・ブレーブスへ移籍したが、他にも、カービー・イェーツ(サンディエゴ・パドレス)やウィル・スミス(サンフランシスコ・ジャイアンツ)がいた。エドウィン・ディアズ(ニューヨーク・メッツ)とライセル・イグレシアス(シンシナティ・レッズ)も、動く可能性はあった。

 2013年から、ドジャースは地区優勝を続けている。今秋の地区7連覇も、まず間違いないところだ。潤沢な資金を持つ上、ドジャースは育成もうまい。2016~17年はコリー・シーガーコディ・ベリンジャーが続けて新人王を受賞し、2018年もウォーカー・ビューラーが3位に入った。今シーズンも、新人王はメッツのピート・アロンゾが手にしそうだが、ドジャースではアレックス・バーデューゴが台頭している。

 これからも勝ち続けるために、トップ・プロスペクトを手放したくないという気持ちはわかる。だが、1988年を最後にワールドチャンピオンから遠ざかり、ここ2年続けてワールドシリーズで敗れているだけに、将来を多少犠牲にして、今秋に勝負を賭けてもよかった気がする。たとえ、地区連覇を二桁まで伸ばしたとしても、そこにワールドチャンピオンが一度もなければ、画龍点睛を欠く。

 なお、今夏のトレード・デッドラインまでに、各球団が獲得した選手(メジャーリーガー)は、こちらの記事にリストを掲載した。

トレード・デッドライン総括。グレインキーを獲得したアストロズが、ワールドチャンピオンの筆頭候補に!?

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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