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昨夏に続き、この夏も同じ球団が同じ投手を獲得。夏の風物詩!? それとも、勝利の使者!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョーダン・ライルズ May 5, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月29日、ミルウォーキー・ブルワーズとピッツバーグ・パイレーツが、右投手と右投手を交換した。ジョーダン・ライルズがブルワーズへ移り、コディ・ポンスはパイレーツへ移籍した。ライルズは、メジャーリーグ9年目の28歳だ。3歳下のポンスは、まだメジャーデビューしていない。昨シーズンと今シーズンはAAで投げ、今シーズンはリリーフに専念していた。

 昨年の夏も、ブルワーズはライルズを獲得している。トレードではないが、サンディエゴ・パドレスがウェーバーにかけたライルズを、8月5日に手に入れた。

 昨シーズン、ブルワーズは地区優勝を果たし、7年ぶりにポストシーズンに進出した。今シーズンは、地区首位とワイルドカードの2番手まで、いずれも1ゲーム差の位置につけている。

 もっとも、二夏続けて獲得したとはいえ、ライルズを「優勝請負人」や「勝利の使者」と呼ぶのは躊躇われる。

 昨シーズンの移籍後は、リリーフとして11試合に投げて防御率3.31。ビハインドや大量リードの場面で登板することが多く、セーブもホールドもつかなかった。ポストシーズンでは2シリーズともロースターに入れず、オフに入ると、ブルワーズに2019年の球団オプションを破棄された。今シーズンはパイレーツで先発に戻り、移籍までに17登板して防御率5.36を記録した。

 ブルワーズの先発投手陣には、故障者が相次いでいる。7月下旬にブランドン・ウッドラフヨーリス・チャシーンが故障者リストへ入ったのに続き、ジオ・ゴンザレスも左肩の張りを訴えて降板した。ジオは大事に至らないようだが、ウッドラフは9月まで復帰できず、チャシーンも数週間かかる見込みだ。彼らだけでなく、ジミー・ネルソンも6月下旬から離脱している。

 月末のトレード・デッドラインまでに、ライルズより上の先発投手を獲得しても、それだけでローテーションの人数不足は解消できない。交換に若手を手放す必要があることを考えると、2人を手に入れる――例えば、ザック・ウィーラー(ニューヨーク・メッツ)とマディソン・バムガーナー(サンフランシスコ・ジャイアンツ)をいずれも獲得する――のは、現実的ではない。また、このクラスの投手の場合、他球団も目をつけているので、首尾よく獲得できるとは限らない。

 まずは、ローテーションの穴を一つ埋める。それが、ライルズを獲得した目的だろう。

 チームを牽引するほどの働きは望めないにしても、ライルズに試合を作る――ブルワーズに勝つチャンスをもたらす――力がないわけではない。防御率は5点台ながら、カーブを軸に空振りさせることができ、奪三振率は9.84と高い。6月に左太腿裏を痛めて故障者リストに入るまでの12先発は、防御率3.64だった。

 7月31日の先発マウンドに、ライルズは上がる予定だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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