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3億ドルの契約でもポジションは??? 遊撃と三塁のどちらを守るのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
マニー・マチャド Sep 14, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 サンディエゴ・パドレスが、マニー・マチャドの入団を発表した。10年3億ドルの契約は、FA史上最高の総額で、延長契約を含めても2番目に大きい(これまでに2億ドル以上の契約を得た選手については「FAビッグ2の新契約は「総額3億ドル」あるいは「年平均3500万ドル」!?」にリストを掲載した)。

 2010年のドラフトで、ボルティモア・オリオールズから全体3位指名を受けた当時、マチャドは遊撃手だった。以降もマイナーリーグでは遊撃を定位置としてきたが、2012年8月のメジャーデビューとともに、三塁へ移った。オリオールズの遊撃には好守のJ.J.ハーディがいた一方で、三塁を守っていたウィルソン・ベタミーはユーティリティに過ぎなかった。ハーディはこのシーズンから、3年続けてゴールドグラブを手にした。

 ハーディの退団に伴い、マチャドは昨シーズンから遊撃に「復帰」し、夏にロサンゼルス・ドジャースへ移ってからも――ドジャースでは遊撃手のコリー・シーガーが5月にトミー・ジョン手術を受け、三塁にはジャスティン・ターナーがいたので当然ながら――三塁には戻らなかった。ボルティモア・サンのジョン・ミオーリによると、マチャドはトレードの直前に「僕は遊撃を守っている。ここがプレーしたいポジションで、できることはわかってる。キャリアを通して僕は遊撃手だった。数年間は三塁でプレーしてうまくやったし、このポジションのエリート・プレーヤーだったと思う。でも、結局のところ、僕はずっと遊撃手なんだ。三塁手よりも、遊撃手としての方がいい選手になれる」と語ったという。

 となれば、パドレスでも遊撃を守りそうだが、そうはいかない。

 マチャドは三塁を守り、2013年と2015年にゴールドグラブを受賞している。三塁手としての通算DRSは+84だ。それに対し、昨シーズンは遊撃でDRS-13を記録した。通算と1シーズンの数値とはいえ、まったく天と地。他の守備スタッツも、同じような落差がある。

 これだけなら、メジャーリーグで遊撃を本格的に守ったのは昨シーズンだけなので、たまたま成績が悪かったと看做すこともできる。打撃におけるスランプのようなものだ。

 ただ、パドレスにはフェルナンド・タティースJr.がいる。三塁手だった父と違い、息子は遊撃手だ。まだメジャーデビューはしていないものの、今春のプロスペクト・ランキングでは、ベースボール・アメリカとMLB.comの2位、ベースボール・プロスペクタスの3位に挙がっている。ちなみに、いずれも1位としているのは、同じく二世選手のブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)。こちらは、父が外野手、息子は三塁手だ。

 タティースJr.とゲレーロJr.のメジャーデビューは、いずれも4月半ば以降だろう。その仕組みについては、4年前に「オープン戦で全選手最多のホームランを打っても、トップ・プロスペクトの開幕デビューはならず!?」で書いた。ざっくり説明すると、FAになるのを遅らせるためだ。昨シーズン、ナ・リーグの新人王に選ばれたロナルド・アクーニャJr.――父はマイナーリーガーのままキャリアを終えた――も、AAAで開幕を迎え、4月25日にメジャーデビューを果たした。

 マチャドが遊撃を守るにしても、タティースJr.がメジャーリーグへ昇格するまでだと思われる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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