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どの球団の選手として殿堂入り!? 今回選出の4人中、ムシーナは難題

宇根夏樹ベースボール・ライター
マイク・ムシーナ Sep 12, 2007(写真:ロイター/アフロ)

 今回の投票で殿堂入りが決まった4人のうち、エドガー・マルティネス(得票率85.4%)とマリアーノ・リベラ(100%!)は、プロ入りから引退まで、同じ球団に在籍した。エドガーはシアトル・マリナーズ、リベラはニューヨーク・ヤンキースだ。

 他の2人は、1度ずつ移籍している。ロイ・ハラデイ(85.4%)はトロント・ブルージェイズとフィラデルフィア・フィリーズ、マイク・ムシーナ(76.7%)はボルティモア・オリオールズとヤンキースのユニフォームを着て投げた。

 殿堂に飾られるプラークで、ハラデイの肖像はブルージェイズのキャップをかぶっているだろう。サイ・ヤング賞はどちらの球団でも受賞しているが、16シーズン中、フィリーズで投げたのは最後の4シーズンだけだ。2013年のオフ、ハラデイはブルージェイズと1日契約を交わし、引退会見を行った。

 一方、ムシーナの場合、そう単純ではない。

 18シーズンのうち、最初の10シーズンはオリオールズ、その後の8シーズンはヤンキースで投げ、それぞれ147勝(54.4%)と123勝(45.6%)を挙げた。シーズン2ケタ勝利は9度と8度、防御率は3.53と3.88だ。

 いずれもオリオールズ時代の方が少し勝るが、ポストシーズンのキャリアは逆転する。出場はオリオールズで2度(1996~97年)に対し、ヤンキースでは7度(2001~07年)。防御率は2.53と3.80だが、登板数とイニングが倍以上も違うので、参考にはならない。また、ムシーナはワールドチャンピオンにはなれなかったものの、ワールドシリーズに2度出場した。これは、いずれもヤンキース時代(2001、03年)だ。ちなみに、ムシーナが入団する直前(2000年)と退団した直後(2009年)に、ヤンキースはワールドシリーズを制している。

 ムシーナのような例は、過去にもあった。例えば、2015年に殿堂入りしたランディ・ジョンソンは、リベラとムシーナのチームメイトとして投げたヤンキース(2005~06年)を含め、6球団に在籍し、マリナーズとアリゾナ・ダイヤモンドバックスではそれぞれ100勝以上(130勝/118勝)を挙げた。ランディのプラークがかぶるキャップには、ダイヤモンドバックスのロゴがついている。よって、マリナーズのキャップをかぶったプラークは、ケン・グリフィーJr.に続き、エドガーが2人目だ。何年か後には、イチローが3人目となるだろう。

 ランディより1年早く殿堂に迎え入れられたグレッグ・マダックスも、シカゴ・カブスとアトランタ・ブレーブスの2球団で、ともに100勝以上(133勝/194勝)を記録した。プラークのマダックスは、キャップこそかぶっているが、そこにはロゴがついていない。

 プラークの肖像がかぶるキャップの球団を決めるのは――殿堂入りする本人の意向を汲むこともあるようだが――本人ではなく殿堂だ。

 なお、先日、「トランプ大統領が言っているとおり、あの投手は殿堂入りに値するのか」で書いた、ドナルド・トランプ大統領が推すカート・シリングは、今回も殿堂入りに必要な75%以上の票を得られなかった。ただ、得票率60.9%は4人に次ぎ、自身の最高値でもあった。記者投票による殿堂入りのチャンスは、あと3回残っている。シリングの場合、どの球団のキャップにするかは、ムシーナ以上に難しそうだ。フィリーズ、ダイヤモンドバックス、ボストン・レッドソックスの3球団が考えられる。

 追記:1月25日、殿堂は、ハラデイとムシーナのキャップをロゴなしにすると発表した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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