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エリート一塁手の放出は「ファイヤー・セール」の幕開けか。平野佳寿もトレード要員!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ポール・ゴールドシュミット Jun 10, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 アリゾナ・ダイヤモンドバックスが、若手3人&ドラフト指名権と引き換えに、ポール・ゴールドシュミットをセントルイス・カーディナルスへ放出した。

 ゴールドシュミットは、エリート一塁手だ。名前に含まれる「ゴールド」のとおり、輝かしいキャリアを築いてきた。パワーと選球眼を両立させ、ここ6シーズンのうち、OPS.900を下回ったのは2016年の.899だけ。一塁の守備もうまく、奇数年は3度ともゴールドグラブを受賞している。また、2018年は7盗塁ながら、その前の3シーズンは平均23.7盗塁を決めた。さらに言えば、プロ入り後も学業を続け、2013年9月に理学士号を取得している。この年、ゴールドシュミットは本塁打と打点の両タイトルも獲得した。

 ただ、来シーズンが終わると、ゴールドシュミットはFAになる。アリゾナ・リパブリックのニック・ポコーロによると、ダイヤモンドバックスは契約延長の交渉を行ったものの、まとまらなかったという。

 今オフ、ダイヤモンドバックスからは、パトリック・コービンA.J.ポロックがFAになった。それもあって、ダイヤモンドバックスはゴールドシュミットを保有したままポストシーズン進出をめざすのではなく、再建に舵を切った。この前に、ブラッド・ボックスバーガーシェルビー・ミラークリス・オーウィングスの3人をノンテンダーとしているが、方向性が明確になったのは、ゴールドシュミットの放出だ。なお、コービンはすでにワシントン・ナショナルズと大型契約を交わし(「6年1億4000万ドルは昨オフのダルビッシュより高額だが、加入した先発投手陣にはさらに上が2人いる」)、オーウィングスも1年300万ドルでカンザスシティ・ロイヤルズに入団した。

 ここからは、他のベテランもトレードされてもおかしくない。平野佳寿も、その一人だろう。2年600万ドルの契約は来シーズンまで。サービス・タイムは6年未満だが、契約には、満了とともにFAの条項がついているはずだ。代理人の不手際により、FAになるのが先でも、来年3月には35歳を迎える。ダイヤモンドバックスとしては、再建を完了させ、ポストシーズン進出という「収穫」に向かうまで保有するよりも、将来性のある若手と交換する方が有益だ。具体的な話は浮上していないが、2018年の好投からすれば、需要はある。平野に限らず、リリーフ投手だけでは大きな見返りは得られないので、他の選手とセットにした放出も考えられる。

 ちなみに、ダイヤモンドバックスが最も放出したいのは、ザック・グレインキーに違いない。けれども、トレードを成立させるのはかなり難しい。まだローテーションの一員として投げられるとはいえ、すでに35歳。しかも、3000万ドルを超える年俸は、あと3年も残っている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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