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ここ5年に264盗塁のスピードスターがノンテンダーFAに。球団から不要とされた理由は

宇根夏樹ベースボール・ライター
ビリー・ハミルトン(左)とジョディ・マーサー Jun 15, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ビリー・ハミルトンが、シンシナティ・レッズからノンテンダーとされ、FAになった。来シーズンの契約を、球団に提示されなかったということだ。ハミルトンは年俸調停を申請する権利を持っている。過去2度のオフは、いずれも調停まで進まなかったが、今シーズンの年俸460万ドルからすると、調停にもつれ込んだ場合、来シーズンの年俸は500万ドルを超える可能性もある。それだけの価値はないと、レッズは判断したわけだ。ノンテンダーとする前にはトレードを画策したはずだが、どの球団も同じ考えだったと思われる。

 ここ5シーズンに、ハミルトンは264盗塁を決めている。これは、2位のディー・ゴードン(現シアトル・マリナーズ)より22盗塁多い。81.0%の成功率もそう悪くなく、同じスパンに100盗塁以上の17人中7位に位置する。ハミルトンがノンテンダーとされたのは、5シーズンともリーグ2位の盗塁数に終わり、タイトルを逃しているからではないし、過去4シーズンの55盗塁以上に対し、今シーズンは34盗塁しかできなかったことも、28歳の年齢からすると、主な理由ではないだろう。

 ハミルトンは、ノンパワーのスラップ・ヒッターだ。シーズン本塁打は2014年の6本が最も多く、二塁打も、2014年の25本以外は、どのシーズンも20本に届いていない。さらに、こちらが主な理由だが、ハミルトンは出塁率が低い。ここ5シーズンの出塁率は.297に過ぎず、.300を超えたのは2016年の.321しかない。こんなに低い出塁率でどうやって多くの盗塁を稼いでいるのか、不思議なくらいだ。抜群のスピードはセンターの守備でも発揮しているが、バットを持つハミルトンには長所がほとんどない。

 とはいえ、FAになったハミルトンを欲しがる球団はあるはずだ。レギュラーとしてはともかく、守備固めや代走など、控えとしては役に立つ。年俸は今シーズンより下がっても、マイナーリーグ契約ということはないだろう。

 なお、2年前には、本塁打王を獲得したクリス・カーターが、ノンテンダーとされている。それについては、当時、「昨オフにノンテンダーとされ、新天地へ移って本塁打王を獲得したのに、今オフも再びノンテンダーに」で書いた。その後、カーターは2017年2月に1年350万ドルでニューヨーク・ヤンキースと契約し、7月に解雇された。出場62試合でホームランは8本。メジャーリーグでプレーしたのは、現時点ではここまでだ。2017年の残りはオークランド・アスレティックス、2018年はロサンゼルス・エンジェルスとミネソタ・ツインズのいずれもAAAで過ごし、再び7月に解雇されている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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