FAになったワールドシリーズMVPの去就。レッドソックスは再契約したが、過去には松井秀喜らが退団
11月16日、ボストン・レッドソックスは、FAになっていたスティーブ・ピアースと1年625万ドルで再契約を交わした。
ピアースは6月下旬に、トロント・ブルージェイズからレッドソックスへ移籍した(このトレードについては、「史上初とは対照的なルートをたどり、ア・リーグ東地区の全5チームをコンプリート!」で書いた)。ワールドシリーズでは、第4戦に同点ソロ本塁打と3ラン二塁打、第5戦は先制2ラン本塁打とダメ押しのソロ本塁打を放っただけでなく、最初の10打席は無安打ながら、そのうち4打席で四球を選び、第2戦は同点に追いつく押し出し四球を記録した。シリーズMVPにふさわしい活躍だった。
イライアス・スポーツ・ビューローによると、そのチームにおけるレギュラーシーズンの出場が通算50試合以下の野手が、ワールドシリーズMVPに選ばれるのは、史上初めてのことだ(ピアースはレッドソックスで50試合に出場)。その年のレギュラーシーズンに複数のチームでプレーした選手の受賞は、1969年6月にモントリオール・エクスポズからニューヨーク・メッツへ移ったドン・クレンデノンに続く2人目。また、ワールドシリーズで1試合2本以上のホームランを打った35歳以上の選手は、第5戦のピアースの他には、ベーブ・ルース(1932年の第3戦)とテッド・クルゼウスキ(1959年の第1戦)しかいない。3人とも、2本ずつだ。
ワールドシリーズのMVPに選ばれ、オフにFAとなった選手は、調べたところ、ピアースが8人目だった。そのうち、再契約したのは3人。松井秀喜ら5人は――再契約を提示されなかったか、提示された再契約を断ったかはさておき――別のチームへ移った。
このことからわかるのは、ワールドシリーズMVPの受賞と去就の関連性は皆無、あるいはほとんどないということだ。レッドソックスがピアースを呼び戻したのも、ワールドシリーズMVPだからではない。来シーズン、レッドソックスはピアースを、ミッチ・モアランドと一塁で併用するつもりだろう。左打者のモアランドは、右投手には通算も今シーズンもOPS.780を記録しているのに対し、左投手には.676と.684だ。一方、右打者のピアースは左投手に強い。通算OPSは対右が.743、対左は.853。今シーズンは、それぞれ.828と.959だった。