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マリナーズが正捕手を放出し、25歳の外野手を獲得。これは来年に向けた補強? 数年後をめざす再建?

宇根夏樹ベースボール・ライター
マレックス・スミス Sep 5, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 11月8日、シアトル・マリナーズとタンパベイ・レイズが、トレードを成立させた。マリナーズがマレックス・スミスジェイク・フレイリーの2人を獲得し、レイズは交換に、マイク・ズニーノギレルモ・ヘレディアマイケル・プラスメイヤーの3人を手に入れた。

筆者作成
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 計5人が動いたこのトレードは、マリナーズにとって、来シーズンに向けた「補強」なのか。それとも、数年後をゴールとする「再建」なのだろうか。

 年齢からすると、再建のようにも見える。マリナーズは28歳の2人(と22歳の1人)を手放し、25歳以下の2人を得た。

 ただ、来シーズン、スミスはセンターのレギュラーを務める予定だ。メジャーリーグ3年目の今シーズン、スミスは141試合に出場し、打率.296と出塁率.367、40盗塁を記録した。ホームランは2本ながら、三塁打はリーグ最多タイの10本を打った。

 フレイリーは、2016年のドラフト2巡目・全体77位だ。今シーズンはA+の66試合で、打率.347、出塁率.415、11盗塁、4本塁打、7三塁打。スミスと同じく、スピードがあり、センターを守ることができる。スミスと違い、パワーの伸びしろもありそうだが、現時点ではノンパワーの左打者という点も共通する。

 スミスの獲得は来シーズンに向けた補強で、フレイリーを手に入れたのは、数年後を見据えた動きということだろう。主眼は前者だ。また、フレイリーが開花しなかった場合でも、スミスは2022年のオフまでFAにならない。

 来シーズンは、センターにスミスが入り、ディー・ゴードンはセンターから二塁へ――ロビンソン・カノーの出場停止で、すでにそうなっていたが――戻る。ゴードンの守備は、センターよりも二塁の方がいい。カノーはDHへ回りそうだ。これにより、FAとなったネルソン・クルーズと再契約する可能性は、ほぼ0%になった。

 今オフのマリナーズの動きは、これで終わりではなく、まだ始まったばかりだ。少なくとも、ズニーノがいなくなった捕手のポジションを埋める必要がある。今シーズンはズニーノの他に3人がマスクをかぶったが、2人はもうマリナーズにいない。残るデビッド・フレイタスも正捕手の器ではなく、傘下のマイナーリーグにも、台頭してきそうな捕手は見当たらない。

 一方、レイズは、ディフェンシブでパワーのある捕手を手に入れた。ヘレディアは第4の外野手ながら、スミスが抜けても人材は不足していない。レフトはトミー・ファム、センターはケビン・キアマイアー、ライトはオースティン・メドウズが守る。ファムとメドウズの2人は、7月末に別々のトレードで獲得した選手だ。メドウズは実績こそほとんどないものの、2013年のドラフトで全体9位指名を受け、プロスペクトとして期待されてきた。

 ズニーノ、ヘレディアとともに入手したプラスメイヤーも、もしかしたら、と思わせる。今年のドラフトでプロ入りしたばかりで、指名順位は4巡目・全体118位と高くなく、速球も90マイル前後だが、今シーズンはA-の13試合(12先発)で計24.0イニングを投げ、44三振を奪っている。与四球は4、被本塁打は1本にとどめ、防御率2.25を記録した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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