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マリナーズはどこへ向かうのか。解体&再建をすることなく浮上できるのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジェームズ・パクストン(シアトル・マリナーズ)Sep 7, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 共同通信が、ジェリー・ディポートGM(シアトル・マリナーズ)のコメントを報じている。それによると、ディポートGMはこう言ったという。来年の日本開幕シリーズで、イチローはロースターに入ると思う――。

 そのこと自体は驚きではない。3月20~21日に東京ドームで行われ、オークランド・アスレティックスと対戦するこのシリーズは、ロースターに28人を登録できる。これは、通常よりも3人多い。また、今から1ヵ月前には、スポーツ・イラストレイテッドのシャーロット・キャロルが、「2019年のレギュラーシーズンの幕を開ける日本のシリーズで、イチローはマリナーズのロースター入りが予想される」と題した記事を発表し、ディポートGMの同じようなコメントを紹介している。

 それよりも気になるのは、今オフのマリナーズの動きだ。ヤフー・スポーツのジェフ・パッサンは、マリナーズが本格的な解体を考えているという情報をツイートした。現在のチームを解体して、再建に向かうということだ。一方、MLB.comのグレッグ・ジョーンズとマリア・ガーダッドの記事によると、ディポートGMはチームを解体するつもりはないと語ったという。

 マリナーズが最後にポストシーズンへ進出したのは、イチローがメジャーデビューした2001年のことだ。他の29球団は、2003年以降に少なくとも1度、ポストシーズンへ進んでいる。再建に踏み切れば、マリナーズの空白期間はさらに伸びる。例えば、この秋、5年ぶりにポストシーズンへ返り咲いたアトランタ・ブレーブスの場合、再建をスタートさせたのは、2014年のオフだった。この時、ブレーブスはジェイソン・ヘイワード(現シカゴ・カブス)をセントルイス・カーディナルスへ放出した。

 ただ、マリナーズが採るべき道は、再建ではないだろうか。フェリックス・ヘルナンデスが「キング」としてマウンドに君臨した時代は終わり、5年続けて35本塁打以上のネルソン・クルーズはFAになった。ロビンソン・カノーも36歳だ。加えて、ア・リーグ西地区にはヒューストン・アストロズがいて、今シーズンはオークランド・アスレティックスもポストシーズンに進出した。中途半端な補強では、この地区で勝ち上がるのは難しい。

 マリナーズが放出して、最も大きな見返り――数年後にチームを背負って立つ若手たち――を得られるのは、フェリックスに代わるエースとして台頭した、ジェームズ・パクストンだろう。FAになるのは2020年のオフ、あと2シーズン保有できる。これは、他球団にとっては魅力だ。クローザーのエドウィン・ディアズも、こちらのFAは2022年のオフなので、普通に考えれば手放すのは早いが、ブレイク直後の今こそが売り時だと思われる。再建中は絶対的なクローザーを必要としないし、再建を終える段階に差しかかれば、クローザーを手に入れるのは、先発投手ほど困難ではない。

 他にも、投手と野手を問わず、25歳以上であれば誰を放出してもいい。来春、日本開幕シリーズのスターティング・ラインナップに、ジーン・セグーラカイル・シーガーマイク・ズニーノといった名前がなく、代わりに馴染みのない名前が並んでいても、がっかりすることはない。そのなかの何人かは、これからマリナーズの未来を築いていくのだから(たぶん、いや、きっと)。むしろ、ほとんど変わらない顔ぶれが並んでいた方が、これまでと同じようなシーズンの繰り返しを予感させ、不安は募る。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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