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エースと交換に得た「3人目の選手」は、ただのPTBNLではなかった

宇根夏樹ベースボール・ライター
クリス・アーチャー/7月末にレイズからパイレーツへ Aug 15, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 この夏、タンパベイ・レイズはエースのクリス・アーチャーをピッツバーグ・パイレーツへ放出した。交換に得たのは3人。タイラー・グラスノーオースティン・メドウズに、トレード成立の時点ではPTBNLと発表され、2週間後に移籍したシェーン・バズだ。

 PTBNLは「Player to Be Named Later(プレーヤー・トゥ・ビー・ネームド・レイター)」の略。日本では「後日発表選手」「後日決定選手」と訳される。両球団が合意した数名のリストから、後日、獲得する球団が選ぶのが一般的だ。そのことからもわかるように、高く評価されている選手がPTBNLになることは、皆無に等しい。

 デビッド・オティーズはPTBNLとして、シアトル・マリナーズからミネソタ・ツインズへ移った。ただ、オティーズがブレイクして「ビッグ・パピ」になったのは、ツインズから解雇され、ボストン・レッドソックスと契約した後だ。ちなみに、マイナーリーグ時代のオティーズは、デビッド・アリアスと名乗っていた。

 ところが、レイズが獲得したバズは、昨年のドラフト全体12位だ。今回の場合は、リストからの選択ではなく、最初から「PTBNL=バズ」だったのではないだろうか。登板間隔からも、そう推察できる。7月下旬まで、バズはブリストル・パイレーツ(R)の先発投手として、中4~5日で先発マウンドに上がっていた。けれども、次の登板までは中8日が空いた。

 バズをPTBNLとした理由は不明ながら、健康状態などを確認するのに、レイズが時間を要したのかもしれない。ドルー・ポメランツ(現ボストン・レッドソックス)やトレイ・ターナー(現ワシントン・ナショナルズ)も、PTBNLとして移籍したドラフト1巡目だが、バズとは事情が異なる。この当時、ドラフトで指名して入団させた選手は、1年経つまでトレードできなかったため、当初はPTBNLとし、禁止期間が過ぎるのを待って移籍させた。

 バズの投球は、最速98マイルの速球、カッター、スライダーが主体だ。移籍前は10試合に先発して、防御率3.97を記録した。与四球率は4.57ながら、奪三振率は10.72。ファングラフスによれば、ゴロ率も62.0%と高い。移籍直前の2登板は、計9.2イニングを投げて得点を許さず、アパラチアン・リーグの週間最優秀投手に選ばれた。まだ原石に近く、メジャーデビューするのは数年後だろうが、将来はエースとなる可能性を秘めている。

 なお、バズはツイッターのハンドルネームを「オズの魔法使い(The Wizard of Oz)」に引っかけ、@thewizardofbazとしている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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