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あの一打は、どこまで「究極」だったのか。3点ビハインドからのサヨナラ満塁本塁打を検証する

宇根夏樹ベースボール・ライター
デビッド・ボーティー(シカゴ・カブス)Aug 12, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月12日、シカゴ・カブスのデビッド・ボーティーは、0対3の9回裏2死満塁から、代打サヨナラ・グランドスラムを放った。

 3点差からのサヨナラ満塁本塁打、「アルティメット・ウォークオフ・グランドスラム」は、ボーティーを含めて29人が記録している。

筆者作成
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 そのうち、0対3の「2アウト」に「代打」で起用され、「2ストライク」から「チーム全得点」を叩き出したのは、ボーティーだけだ。また、「メジャーリーグ1年目」の「25歳以下」で、それまでに「グランドスラム」も「サヨナラ本塁打」も打ったことがなく、これが「通算5本目以下のホームラン」だったのは、ダニー・クラビッツ(1956年)とボーティーしかいない。

 数少ない「アルティメット・ウォークオフ・グランドスラム」のなかでも、ボーティーの一打は、かなりの「アルティメット(究極)」と言っていいだろう。

 もっとも、それぞれの点においては、ボーティーを凌ぐ選手もいる。クラビッツは通算10試合目、キャリア初のホームランだった(通算10本塁打)。ボーティーは34試合目&3本目だ。一方、カール・テイラー(1970年)の通算本塁打はクラビッツと同じ10本だが、クラビッツとは反対に、これがキャリア最後のホームランとなった。

 ボーティーが2死のカウント2-2から打ったのに対し、デル・クランドール(1955年)、ロジャー・フリード(1979年)、アラン・トランメル(1988年)、クリス・ホイルズ(1996年)の一打は、2死のフルカウントから飛び出した。ディック・スコフィールド(1986年)は2死のカウント0-2からだ。延長戦で打った選手も4人を数え、ジェイソン・ジアンビ(2002年)は14回裏に決着をつけた。

 25歳のボーティーより若かった選手もいる。最年少はロベルト・クレメンテ(1956年)の21歳。最高齢はエディ・ジョースト(1952年)の36歳だ。他の28人と違い、クレメンテはランニング本塁打で記録した。ロジャー・コナー(1881年)の場合、グランドスラム自体がナ・リーグ史上初だった。

 ちなみに、ボビー・トムソン(1952年)はこの一打より、前年に打ったサヨナラ3ラン本塁打の方がよく知られている。1951年、トムソンのいたニューヨーク・ジャイアンツは、ブルックリン・ドジャースと並んでレギュラーシーズンを終え、ワールドシリーズ出場をかけて3試合制のプレーオフを行った。その3試合目の9回裏、トムソンは2点ビハインドの1死二、三塁から「世界が耳にした一打(ショット・ハード・ラウンド・ザ・ワールド)」を放った。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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