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30球団で唯一、夏のトレードで「買い手」にも「売り手」にもなっていない球団は、ここから動き出すのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
左からH.ペンス、G.ヘルナンデス、A.マッカッチェン  Jun 8, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 オールスター・ゲームからトレード・デッドラインまでに成立したトレードは、40件を超える。ほぼすべての球団が、「買い手」か「売り手」、あるいはその両方としてトレードに関わった。

 ちなみに、「買い手(バイヤー)」とは、ポストシーズン進出に向けて補強を施す球団を指す。そのための選手を供給する球団が「売り手(セラー)」だ。一般的なトレードでは、「買い手」は交換に将来有望な人材を手放し、「売り手」はそれを手に入れる。

 そのなかで、サンフランシスコ・ジャイアンツだけは動かなかった。

 オールスター・ゲームの前を含めても、7月のトレードは1件のみ。8日にテキサス・レンジャーズへ、オースティン・ジャクソン(控え外野手)、コリー・ゲアリン(救援投手)、ジェイソン・バー(メジャーデビュー前の先発投手)を放出し、交換にPTBNL(後日決定選手)か金銭を受け取る。この動きは、年俸総額の削減を主な目的とする。若手のバーを欲しがるレンジャーズに、ベテラン2人を引き取らせた。

 では、ジャイアンツはこのまま「買い手」としても「売り手」としても動かず、夏を過ごすのか。

 8月2日の時点で、ジャイアンツは地区首位まで5ゲーム差、ワイルドカードの2番手までは4.5ゲーム差の位置にいる。ポストシーズン進出の可能性はまだある。ただ、先発投手のジョニー・クエイトが8月2日にトミー・ジョン手術を受けたのに続き、内野手のパブロ・サンドバルも、右太腿裏の手術によってシーズンを終える。先発投手のジェフ・サマージャや一塁手のブランドン・ベルトも、故障者リストに入っている。

 ここから、ジャイアンツは「売り手」に回るのではないだろうか。

 外野手のアンドルー・マッカッチェンハンター・ペンス、先発投手のデレク・ホランド、控え捕手のニック・ハンドリーは、シーズンが終わるとFAになる。そのうち、マッカッチェンとホランドの2人は、7月もトレードの噂が出ていた。来シーズンまで契約が残る救援投手のウィル・スミスにも、獲得の引き合いが来ていたようだ。

 彼らを放出する見返りにジャイアンツが求めるのは「原石」ではない。ベテランのレギュラーが多く、エースのマディソン・バムガーナーは来シーズン限りでFAになることを考えると、ジャイアンツは「再建」ではなく「再浮上」をめざすと思われる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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